〈群馬追悼碑裁判〉最高裁が忖度判決を容認、100人が抗議の声


“極めて政治的な判断”

「最高裁棄却!!抗議集会~群馬の森・朝鮮人追悼碑存続のために」が20日に都内で開かれ、約100人の市民らが抗議の声をあげた。

県立公園「群馬の森」にある朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑について、県が設置許可を更新しないのは違法だとして、「記憶・反省そして友好」の追悼碑を守る会(以下、「守る会」)が処分の取り消しなどを求めた民事訴訟。最高裁は6月15日付の決定で、「強制連行」という表現から碑の中立性を否定し、市民団体側の請求を全面棄却した2審・東京高裁判決を確定させた。

これと関連し、20日には東京・千代田区の参議院議員会館で「最高裁棄却!!抗議集会~群馬の森・朝鮮人追悼碑存続のために」が開かれ、約100人の市民らが抗議の声をあげた。

集会は本来、最高裁判決を夏頃と想定し、同胞や日本の市民など広範な人々が結集し勝訴に向けて決起する場となる予定だった。しかし、最高裁による不当判決確定という突然の知らせを受け、急きょ抗議集会へとその趣旨を変更し開催される運びとなった。

集会冒頭、あいさつに立った「守る会」側弁護団弁護団長の角田義一弁護士は、「1審判決では、県のやり方が常識に反しており、裁量権の逸脱および違法だと判断したが、2審判決は、裁判の文章とはいえないほど情けないもので、怒りを通り越してあきれた」と下級審の判決について言及した。

そのうえで角田弁護士は、県の行為について憲法違反を主張した「守る会」側の上告に対し、憲法違反には該当しないと棄却した最高裁の判断に「なんの理由も書かない三行半よりもさらにひどい内容だ。これは判決文とはいえない」と強い憤りをあらわにした。

一方で、今後「どのような闘いをしていくべきか共に考えていきたい」と、会場に集まった参加者たちに呼びかけながら「今日が新たな闘いの出発点だ。あくまで追悼碑の死守」を前提に、対応策を練っていこうと訴えた。

つづいて裁判の経過報告を、同弁護団事務局長の下山順弁護士が行った。

会見に臨む原告側弁護団の角田義一弁護団長(左)と下山順事務局長(右)

下山弁護士は、1審・前橋地裁判決が、県による裁量権の逸脱を認め、碑の価値が残っているとしたのに対し、2審・東京高裁判決は「政府が認めない強制連行という発言をすると、追悼碑の中立性が失われる、よって都市公園法が定める公園施設ではなくなるという驚きの判決を出した」と改めてその不当性を強調した。

さらに同氏は、「戦時中、朝鮮人強制連行があったのは歴史学上の確定した史実であり、強制連行と発言しただけで中立性が損なわれるというのは、極めて政治的に偏向した中身だった」と非難。また2審判決に先立つ3ヵ月ほど前、日本政府が「強制連行」という言葉は不適切だとする趣旨の答弁を閣議決定し、文科省が教科書会社に対し異例の説明会を開いた経過について触れながら「東京高裁判決は、政府による歴史修正の試みに忖度したと言わざるを得ない、極めて政治的な判断だ。中立性を指摘するが、むしろ判決そのものが法的評価とはいえないものだった」と異議を唱えた。

さらに、最高裁判断については「自治体が表現の場を排除していいのか」「公園施設に該当するために中立性は必要なのか」などの問題になんら立場を示さず容認したとして、「司法の危機というべき事態」だと警鐘を鳴らした。

集会では、歴史研究者の竹内康人さん、一橋大学名誉教授の田中宏さん、社民党党首の福島みずほ参院議員が発言したほか、会場参加者から、裁判に対する思いや今後の対応策に関して発言が相次いだ。

一方、この日の集会では、最高裁に対する抗議文が採択された。

集会後、「守る会」側弁護団が記者会見を開き、県に対し、改めて追悼碑の設置を認めるよう要求する意向を示した。また同弁護団では今後、碑の維持を前提に、あらゆる法的措置を含む対応を検討していきたいとしている。

(韓賢珠)

【関連年表】

  • 2004年3月:協議の末、群馬県が「群馬の森」への追悼碑設置を許可(14年1月までを期限とする)。翌05年から年に1回、碑前で追悼式が開かれる。
  • 2012年5月~:碑の撤去を求め、排外主義団体が街宣活動。碑は「自虐史観」だとして、県に対し抗議電話やメールが相次ぐ。
  • 2013年12月:設置期間の更新期限を前に、「守る会」が更新申請。
  • 2014年6月:設置許可の取り消しを求める請願を県議会が賛成多数で採択
  • 2014年7月:県が碑の設置期間更新を不許可に
  • 2014年11月:「守る会」が県を相手取り提訴
  • 2015年2月:前橋地裁で第1回口頭弁論
  • 2018年2月:1審・前橋地裁は、県の裁量権逸脱を認め違法と判断。不許可処分の取り消しを命じる。県が控訴→一部棄却された内容を不当とし、「守る会」も付帯控訴。
  • 2018年9月:東京高裁で控訴審第1回口頭弁論
  • 2021年8月26日:2審・東京高裁は、県側の主張を認め、一審判決を取り消す。「守る会」の請求を全面棄却。
  • 2021年9月6日:2審判決を不服として、「守る会」側が最高裁へ上告
  • 2022年6月15日:最高裁が上告棄却、判決確定

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