〈群馬追悼碑裁判〉市民団体の逆転敗訴が確定/最高裁【1報】
2022年06月16日 16:42 権利県立公園「群馬の森」にある朝鮮人強制連行犠牲者追悼碑について、県が設置許可を更新しないのは違法だとして、「記憶・反省そして友好」の追悼碑を守る会(以下、「守る会」)が処分の取り消しなどを求めた民事訴訟で、県による碑の更新不許可処分を違法とした1審・前橋地裁判決を取り消し、市民団体側の請求を全面棄却した2審・東京高裁判決が確定した。16日の群馬県知事による定例記者会見で明らかになった。
会見で、山本一太知事は「昨日6月15日付で(「守る会」の)上告を棄却するという決定がなされたと通知があった」と今日付で最高裁からの通知を受け取ったことを明らかにした。
最高裁決定を受け、山本知事は「極めて妥当な決定。今後速やかに手続きを進め、設置者の方に自主的な撤去を求めていきたい」と述べた。
「守る会」では、2審判決を不服として、昨年9月6日に最高裁へ上告していた。
◇
県立公園「群馬の森」にある追悼碑は、「国(日本)が朝鮮人に対し、多大の損害と苦痛を与えた歴史の事実を深く記憶にとどめ、心から反省し、二度と過ちを繰り返さない決意の表明」(碑文より引用)として2004年4月に建立。同碑の設置と関連しては、県議会の全会一致で決議され、県と碑を設置した「『記憶・反省そして友好』の追悼碑を守る会」(以下、「守る会」)の前身団体による話し合いの末に、県の許可を得て建てられた。
しかし、県は、設置期間の更新前年となる2013年に「守る会」からの更新申請を受けるも、更新時期から半年経過した2014年7月、碑が「都市公園の効用を全うする機能を喪失」したとして、設置期間更新の不許可を通知、碑の撤去を求めていた。
これに対し、「守る会」は、抗議団体による街宣活動などをきっかけに、①追悼集会での来賓のあいさつに「政治的」発言があり、②碑が「紛争の原因」になるなどの理由で設置期間更新を不許可とした県の処分を不服として、処分の取り消しと更新申請許可の義務付けを求め、訴えを起こした。
1審の前橋地裁は、「強制連行」という文言を理由に、県側が許可条件違反と主張する「政治的行事」があったと認めたものの、県による不許可処分は「社会通念に照らし著しく妥当性を欠くもの」だと裁量権の逸脱も認め、そのうえで「都市公園の効用を全うする機能は喪失していない」として当該処分を違法であると判断。県による不許可処分を取り消した。
しかし昨年8月27日の2審判決で、東京高裁の髙橋譲裁判長は、「強制連行」という「政治的発言」により、「追悼碑は、政治的争点(歴史認識)にかかる一方の主義主張と密接に関係する存在とみられるようになり、中立的な性格を失うに至った。その結果、公園施設としての前提を失い、設置の効用も損なわれた」と指摘。県の判断には「正当な理由がある」として、「政治的行事」を認めながらも公園の効用は存続するとした1審の判断を覆した。また設置許可更新の義務付けについては1審、2審ともに裁量権の範囲内であるとしながら「守る会」側の請求を棄却した。
(韓賢珠)
【関連年表】
- 2004年3月:協議の末、群馬県が「群馬の森」への追悼碑設置を許可(14年1月までを期限とする)。翌05年から年に1回、碑前で追悼式が開かれる。
- 2012年5月~:碑の撤去を求め、排外主義団体が街宣活動。碑は「自虐史観」だとして、県に対し抗議電話やメールが相次ぐ。
- 2013年12月:設置期間の更新期限を前に、「守る会」が更新申請。
- 2014年6月:設置許可の取り消しを求める請願を県議会が賛成多数で採択
- 2014年7月:県が碑の設置期間更新を不許可に
- 2014年11月:「守る会」が県を相手取り提訴
- 2015年2月:前橋地裁で第1回口頭弁論
- 2018年2月:1審・前橋地裁は、県の裁量権逸脱を認め違法と判断。不許可処分の取り消しを命じる。県が控訴→一部棄却された内容を不当とし、「守る会」も付帯控訴。
- 2018年9月:東京高裁で控訴審第1回口頭弁論
- 2021年8月26日:2審・東京高裁は、県側の主張を認め、一審判決を取り消す。「守る会」の請求を全面棄却。
- 2021年9月6日:2審判決を不服として、「守る会」側が最高裁へ上告
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