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短編小説「労働一家」13/李北鳴

2022年10月22日 09:00 短編小説

それは前回の生産協議会の席上、職業同盟の増産部長と職場長とが代わるがわる強調したことであった。

その日の昼、鎮求と達浩は民主建国室において誓約書にサインした。2週間という短期間ではあるが、液体アンモニアを増産し、硫安の計画量を達成し得るか否かという、重大な意義をもつ競争であった。労働者たちは初日から大きな関心を抱いていた。

達浩は翌朝、新聞学習会が終わるのを待たず、いつのまにかこっそり裏口から脱け出して機械を操作していた。彼には、競争に勝つためには新聞学習会など大した問題ではないと思われたのである。しかしその後、彼は借金取りに追われるように、日ましに深刻になり焦っていった。それがよいことでないのは知らぬでもなかったが、ただただ勝たんがためには仕方のないことだと考えていた。

旋盤内部では上半期の後期に入って、鋳物、プレス両部門との間で生産責任量の超過達成、出勤率の向上、職場の美化――この3項目にわたって「三角競争」が始まっていた。これは、言うなれば建国増産運動が個人の競争ばかりでなく、集団的な運動へと一歩前進したものであった。

しかし達浩は、この三角競争を自分と鎮求との競争には全然無関係なものと突き離して考えていた。彼は三角競争より、個人競争での勝利を念頭においていた。三角競争には負けても、個人競争に勝てばいいと考えていたのである。達浩は三角競争の一項目にしたがって、職場の内外を清掃し、花壇をととのえ、噴水を造っている同僚たちに深い興味を示さなかった。

「噴水や花なんてものは、良家のお庭にでも造ったり植えたりするもんだろう。このスクラップの山に似合うもんか。この忙しいのに誰が眺めるってんだい…」

とはいえ、いやいやながらもやるしかなかった。

達浩は、1947年は1年365日、苦役に耐えなければならないと思っていた。こんな極端な考えが彼の心理状態に一種の圧迫感を与えていた。彼が見るに、この現実はあまりにもハイペースで突き進んでいた。

周囲の煩しさに朦朧とする時がたまにあった。達浩は、1947年度の自分のノルマをなんとかやりとげて、一息つこうと心づもりをしていた。この1年間のノルマを達成すれば、来年からは落着いた気持で仕事が出来ると思った。彼は、1948年からはそんなに急がなくとも、万事順調に進むと信じていたのである。

今年1年さえ送ればなんとかなるだろう――

(つづく)

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