短編小説「労働一家」30/李北鳴


「もし、トンムたちが2番目のピストンを私にまかせてくれるんだったら、私は真心をこめて、死力を尽くして立派な製品を作り出すことを固く誓います」

と達浩は自分の言葉を結んで檀を下りた。

「鎮求トンム!僕は君にほんとうにすまんことをした。すべてを許してくれ。以前の友情でこれからもよろしくたのむよ!」

「ありがとう達浩!あやまちはお互いさまさ。これから一生懸命やろうじゃないか。力を合わせりゃ、どんなことだってやれないことはないさ」

鎮求は達浩の手を固く握りしめながら、しばらくはなさなかった。

急に拍手が起こった。それは鎮求よりも達浩に送る激励の拍手だった。

鎮求が電話を受けて職業同盟委員長のもとへ行くと、急用だから履歴書を書いて出すようにと言われた。

履歴書を出して家へ帰ると、一足先に帰った妻が夕食の準備に大わらわだった。

「ね、あなた。あたしがちょっと遅く帰ったら、スドルが水汲みやら、火を起こしたり、大変な変わりようなのよ」

感心して上ずった妻の言葉に、

「スドルが?やつも忙しい時だってことを知ってるからだろ」

鎮求はうわの空で答えたが、内心は先の履歴書のことで頭がいっぱいだった。もしかしたら人事移動かな?それとも?気になったが、知るすべもなかった。

鎮求はメーデーの日に職場支配人の表彰者に内定されていた。皆勤して資材を節約しながら生涯ノルマを上げたばかりでなく、なによりも家風を改めたのが他の模範になったからであった。

「一杯いかが」

いつもより明るい妻が、透き通ったコップに焼酎をなみなみとついだ。

「うーむ、匂いだけでもこたえられないなあ!」

ちょうど飲みたかった夕暮れ時だったので、彼は一口でグッとあけてしまった。

「うーっ、うまい!スドルはどこへ行ったんだ?」

「運動服を買ってやったら、さっそく着て出ていったわ」

スドルはメーデーの体育会ではリレー選手に選ばれていた。

(つづく)

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