短編小説「労働一家」14/李北鳴


作業開始のサイレンが鳴り終わるまでに、旋盤工たちは各自の機械の前に立っていた。

まだ笑いを含んだ顔も見える。おどけ者の文三洙は、息を激しくはずませながら何回も額の汗をぬぐう。彼は相撲で5人をたて続けに負かしてきたところだった。

朱文植親爺も金鎮求も、うららかな春の日のように気分がよかった。

「親爺さん。一丁、腕前を見せましょう」

メガネの折れたところを細い針金で巻いている親爺さんに言葉をかける鎮求の腕には力がこもった。

「当たり前よ、腕前どころか、昼飯も食ったし、精いっぱい笑ったし、力が出るさ。だけど達浩はあそこで何をしてる…」

親爺さんはメガネを鼻の先にかけながら、グラインダーがあるところへ行った。鎮求は達浩の方を見やった。行かなくてもわかった。

「親爺さん、すまない」

達浩は朱文植に会わせる顔がなかった。

「また折ったのか…」

親爺さんが知る限りでも、ピストン・ロットを削り出した後、これで3回目であった。

「すみません」

「そういう言葉は聞きたくないよ。後輩たちの模範になる人間が、一体なんてざまだ。みんなが楽しく遊ぶ時も付き合わないで…。人間、そうでは使いものにならんぞ、使いものに…」

「また説教ですか。踊って歌って笑うだけが遊びじゃあるまいし…」

達浩はまたもや気分が憂うつになってきた。彼には親爺さんが鎮求の味方をしていると思えたのだ。

「このごろお前がくよくよするからだよ。達浩!作業中にこんな私語はいけないが、わしに一度、全部話してくれ。お前さんがミスでバイトを折るとは思えない…」

「わかったよ、後で話すよ」

達浩は、親爺さんの小言を聞きたくなかった。憂うつだった。

「おい、鎮求、予備のバイトはないか?」

口笛を吹きながら図面に見入っていた鎮求の肩を叩き、親爺さんが話しかけた。

「何ですか?」

「達浩がまた折ったんだよ」

「私の予想が当たりました。それではいけないんだけど」

鎮求は素早く道具箱から研いでおいたバイトをもち出し、グラインダーの方へ行った。

(つづく)

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