短編小説「労働一家」24/李北鳴


「金にならない仕事を、高い飯くって自分から進んで出るなんて…、あれは牛のように鈍い女だ!」

後ろ指をさしながら悪口をたたくものもいたが、人のうわさも七十五日と、いつの間にか悪口も影をひそめてしまった。

仁順は直接、現場で活気溢れる光景を目の当たりにしてみると、固く閉ざされた扉がぱっと開くように、視野が果てしなく拡がり、心がすーっと開かれる思いだった。私も工場で働けたら…いつの間にか彼女の胸に労働に対する希望が芽生えていった。仁順は硫安肥料出荷作業を通して世の中の移り変わりを聞けたばかりでなく、毎日、昼食時間に繰り広げられる専門家やサークル員たちの芸術公演は、彼女の心を完全にとりこにしてしまった。

彼女は「金日成将軍の歌」「肥料山打鈴(ルビ:タリョンン)」を習い歌った。それは生まれて初めて味わう芸術に対する歓喜だった。

いよいよ金鎮求と李達浩のピストン・ロット完成の決戦の日が来た。この日、沈みがちだった達浩の顔に久し振りに笑顔が戻った。胸を張って歩く姿には自信にみちた労働者の意気込みがうかがえた。娯楽室ではみんなの前で歌をうたい、「せむし踊り」まで踊って人気をさらった。今までの憂鬱はどこへやら、彼は愉快にはしゃいだ。

(そうさ。あれが達浩トンムの本当の姿だったんだ…)

「せむし踊り」に興ずる姿を見て鎮求は思った。彼はいくらか肩の荷が下りた感じで安心した。

「よお、達浩。少しは気が晴れたかね」親爺さんが冗談に話かけた。

「僕がいつそんな?親爺さんも人が悪い」達浩は照れくさそうに言った。

競争期間の実績は達浩がはるかに上まわっていた。彼は鎮求よりも7時間も先にロットを削って、新たにもう一つ旋盤機で削り始めていた。

「金トンム!まだかね。すり減ったバイトがあったらおれが研いてやるよ」

「ありがとう。あれば頼むんだが今は…」

(つづく)

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