短編小説「労働一家」26/李北鳴


金鎮求は親爺さんと一緒に花壇に種をまいて、まっすぐメーデーに関する講演会に行き、映画を見終わって8時ごろ家に帰った。

「ご苦労さん」

妻はさっと立ち上がって夫の茶碗をとりそろえた。鎮求の服から機械油の匂いがプーンとしたが、彼女には、いつもその匂いが食用油のように香ばしかった。

「スドルが優等とったのよ」

妻がスドルの部屋からぐるぐる巻いた紙をもって来ながら言った。

「うん?優等…どれどれ」

鎮求は妻の手からひったくるように巻紙をとって広げた。答案紙はみんな4点以上だった。通信簿に3点がないのが何よりだった。

「やあ!よかった。よくやった」

鎮求は感慨深げにしばらく通信簿から目を離さなかった。

「お腹すいたでしょ。早く召し上がって」

暖かいご飯とチゲの香ばしい風味が鎮求の喉もとを鳴らした。

「スドルはどこへ行った?」

「運動会の準備があるって学校へ行ったわ」

「夕飯は?」

「食べてったわ」

鎮求は息子が食事前だったら、帰るまで待って一緒にするつもりだった。

考えてみると、貧乏ひまなしで、貧しさと日本の侵略者のため学校にも行けなかった恨みがいまだに消えない鎮求だった。

労働者の子どもが国費で大学までいけるこの世の中になって、息子だけはきっと金日成綜合大学に入れてやるぞと、心に固く誓うのだった。

「なあ、おまえ、しあわせがどこからくると思う?金日成将軍の指導のもとではな、すなわちわれわれが幸福をつくり出す人間なのさ。もうだれも、この幸福を取り上げることはできんよ、そこで…」

鎮求は話を中断してにこにこ笑った。

「早くおっしゃいよ」

「おまえに、もう一つ仕事があるんだよ」

(つづく)

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