短編小説「労働一家」2/李北鳴


金鎮求は踊りながら、しきりと李達浩を探した。最近いつもより顔色が悪い彼に、気分転換をさせる意味でも踊りの中に引きこもうとしたが、いつの間にか見失ってしまった。

歌に合わせた踊りが終わった時、三洙は同僚の切望に負け、ふたたび笑いのものまねをはじめた。

まずはじめは、80を過ぎた老人の笑いであった。歯が全部抜けた老婆が、孫の可愛らしい身ぶりをみつめながら笑う様子を真似たものだが、それらしい出来ばえに室内は爆笑の渦でわきかえった。金鎮求は、すでにこの世を去った祖母の笑いを連想しながら、腹をかかえて笑った。

三洙が3回目にやり出した笑いのものまねは、ついに仲間たちが涙をうかべて笑いこけないではいられないようなものだった。ある金持ちのドラ息子が金歯を入れるときの真似であったが、金歯を自慢するために口が裂けんばかりにひんまげるさまを、ちょうど狐が鳴くような声で表現してみせたのであった。三角ばった目を精いっぱいひらき、それらしい表情と動作をしながら笑う姿は、大雄殿の仏様も笑わずにはいられないほど似ていた。仲間たちが机をたたき、足をバタバタさせる音がガラス窓を震わせた。

金鎮求は、お腹をかかえて笑いながらも、ついに我慢できず、傍に座っていた親爺さんの膝を押えながら息苦しく笑った。親爺さんもやはりお腹がよじれるほど笑い、鼻にかかっていたメガネまでも落としてしまった。

鎮求もそうだが、50を過ぎた親爺さんも、日本人の工場で20年ちかく労働者の生活をしてきた。だが、このように自由で和気あいあいとした雰囲気の中で、楽しい休憩時間を過ごしたことはそんなになかった。

建国室は笑いの渦で、しばらく収拾不可能な状態であった。だが室内をこのようにした張本人である三洙だけは、笑うどころか、何もなかったような顔つきで周囲を見回しながら、

「な、なんて、おかしな人たち!」

とつぶやきながら、すーっと外へ出てしまった。

「アハハハ、本当に、煮こんだ牛の首っ玉でも笑い出すよ、こいつは…」

鎮求が言った。その言葉が終わるやいなや、

「牛も笑いこけて、狂い死にするくらいじゃよ、これは。ワッハッハッ…」

と親爺さんまでが笑いころげれば、ふたたび室内は爆笑にわいた。

金日成将軍の指導下に、北朝鮮人民委員会は、わが国の歴史上初めて、人民経済計画を実施した。1947年度の1カ年人民経済計画を輝かしい勝利で飾るために、増産の先頭に立ったこの職場の労働者たちには、日本統治時代では1年間の笑いをためても、これほどまで心から笑うことはできなかった。

(つづく)

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