短編小説「労働一家」27/李北鳴


「なんでしょう」

「スドルの下のことだよ」

鎮求は幼い肌がなつかしかった。だが解放前は思いもよらなかったし、むしろ出来るかと心配でならなかった。今では息子と娘を両膝にのせて昔話を語りたい鎮求の願いも、まんざら夢ではないのだ。

「生んだところで立派に育てなけりゃ…」

妻には、スドルのあとで2度も妊娠したのだが、貧しさのため栄養失調で流産してしまった苦い思い出があった。だが今は、仁順自身も秘かに子どもを望んでいた。スドルの時のように子犬を抱きしめたり、すっぱい桃をたべてみたりする夢も、その現れかもしれなかった。

「とにかく、これが今年度の課題だよ」

鎮求は自分の言葉に照れくさそうに大声で笑いながら言った。

「そうね」妻もにこっとうなずいた。

「これ、たべてみろよ」

鎮求は油ののった焼ニシンの皿を妻の前に押し出した。

「いいわよ、あなたがたべてよ」

仁順はすぐにそれを押しかえした。

「そう言わずにたべろよ」

焼ニシンは行ったり来たりした。

「まあ、いやだって言うのに、冷めないうちにたべてしまって…」

「じゃ、こうしよう」

鎮求はニシンを二つに分けて妻とたべた。

あくる日、鎮求は作業が終わると達浩との競争の中間総括のため建国室へ行った。

達浩は二日酔いに悩まされながら、額に濡れた手拭をあてがって座っていた。昨日と様子が違い、どことなく落ち着かなかった。昼間、部屋で仲間たちが言った言葉が気にかかっていたのだった。鎮求と自分の製品についての、彼らの意見を聞き流すわけにはいかなかったのだ。

鎮求は、メガネを鼻にかけた朱文植親爺の隣に腰をかけた。その後ろに見習工の「トルトリ」が熱心に鼻毛をひっこぬきながら座っていた。達浩はひっきりなしにタバコを吸いながら、中間総括がどんな結論を出すものかといささか焦り気味でいた。

(つづく)

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