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短編小説「労働一家」28/李北鳴

2022年11月21日 09:00 短編小説

初めに、旋盤職場長の韓トンムが発言した。彼は切削した二つのピストン・ロットを厳密に調べた審査委員たちの一致した意見をもって壇上にあがった。

彼はまず、徐々に生産が低下しているアンモニア職場の実情を述べたのち、その生産を高めるために活躍した2人の功績をほめたたえた。

「しかし、今度の2人の競争で現れた、いくつかの重要な失点を指摘せずにはおれません…」

韓職場長のこの言葉にみんな緊張した。

「現在、金トンムより李トンムの方が進んでいるのは事実です。しかしわれわれは、進んでいるからと言って早急に結論を出すのはよくないと思います。それでは、2人の競争でどんな問題が起こったのか?これについて充分検討してみる必要があります」

韓職場長は分厚いノートを机の上に広げた。

達浩は韓職場長の言うことに何か感づいたのか顔色が曇ってきた。

達浩は競争期間、バイトを4個もへし折った。ピストン・ロットは他の鉄よりはるかに強いから、折れた原因は鉄のもろさにあるのではなく、工具をいくら消耗しても先に削って名をあげればそれでよしとする功名心と焦りがあるのだった。結果は製品にありありと現れていた。彼の製品には7、8年の熟練工の腕前が見えると思えば、2、3年の見習工の未熟さの跡も見えた。このように、その時の気分によって彼の技術にムラが現れたのだった。

鎮求は講義を聞いている学生のようにしゃんと身を正して一心に耳を傾けた。彼にはそれが他人事ではなかった。

「われわれは、ここでよくない二つの傾向を見出すことが出来ます。一つは個人競争の真の意義をよく理解せずに、資材を浪費することによって原価を高めることであり、もう一つは製品の質を考慮せずに、量産ばかりを考える傾向です」

韓職場長は実例を上げながら欠点の原因を明かした。誰といって名をあげなかったが、達浩は胸を突き刺される思いだった。特に「無駄な勉強」だの、「不平を言う」だの、「日帝の残滓」などという言葉がいやに胸を突いた。達浩は重苦しい思いに苛立った。韓職場長の指摘は反論する余地がなく、まったく正しいものだった。

また韓職場長は、少なくない労働者たちが、1947年度の人民経済計画の重要性を正しく認識していないと次のように述べた。

(つづく)

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