短編小説「労働一家」15/李北鳴


「達浩!これを使えよ」

鎮求は、無駄なことをするなと言わんばかりにグラインダーのスイッチを切ってから、彼にバイトを差し出した。

「いらんよ」

達浩は素早くスイッチを入れた。

「俺には新しいバイトがあるから使えよ」

「ほとんど削ったから必要ないよ」

達浩は、鎮求の顔を見もしないで断わった。彼は相手の真心を理解する代わりに、一種の侮辱を感じたのだった。

「強情を張らずにこれで削れよ。それでは削れないというのに…」

「これで十分だ。自信があるから心配するな」

「本当にしようがないな…。こっちにくれよ」

2人の会話を側で聞いてた親爺さんが、怒ったように達浩の手から折れたバイトを取り上げた。

「これで、あの貴重なピストンを削るだと?自身があるだと?」

親爺さんの言葉は怒気をおびていた。

「達浩、これを親友のバイトだと思っているのか。これは国家のバイトだぞ。さあ、硫安肥料をたくさん生産するために仕事を始めよう」

達浩はその言葉が胸にしみて鎮求のバイトをうけとった。

興南地区の人民工場に課された1947年度の生産計画は、硫安肥料をはじめとして、カーバイト、石鹸など、各種にわたり、その量は実に膨大なものであった。すべて人民生活の向上にはかけがえのない物ばかりであったが、とりわけ、春の種植えを目前にひかえて、第2四半期の硫安肥料の責任量を達成することが先決問題であった。

土地の主人となった農民たちも、金日成将軍の呼びかけに応え、農産物の増産に決起した。だが、日本人が扱いとっていた土地には、堆肥以外のたくさんの化学肥料を必要としていた。

日本は敗戦直前まで、多年間にわたってこの工場から数百万トンの化学肥料を生産したが、その大部分を自国にもち帰り、朝鮮の農土には雀の涙ほどしかほどこさなかった。

食糧増産の唯一のキーポイントであるだけでなく、この工場のすべての労働者の課題でもある肥料を計画通り生産出来ないとすれば、他の分野の生産を超過達成したといっても、それは自慢にはならなかった。

(つづく)

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