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短編小説「海州―下聖からの手紙」27/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳

2022年08月23日 09:00 短編小説

「ここにあるわ……」。私はノートを差し出しました。

「見てくれたの? どう、うまくいきそうかい?……」

つづけざまにこう質問するからは、一見、私の評価次第に自分が心血を注いだ考案品の運命がかかっているかのようでした。私はわけもわからず大きくうなずきました。そうするとかれの目はまたもや子どものようなあどけない明るさを取り戻しました。

「さあ見たまえ、これさえあればあんな五万山くらい1週間で十分さ!」

私はチルソントンムの明るい顔と図面、それに計算用紙となった「入学願書」をながめ、感情のうねりを抑えきれませんでした。

「トンムっている人は、本当に、本当に……」

私は馬鹿みたいに、つい涙をこぼしてしまいました。こうなるとチルソントンムはすっかりあわててしましました。

「ど、どうしたんだい。何かあったの?」

「ちがうの。うれしくって、つい……。ごめんなさい。さあ説明してちょうだい……」

かれはやっと安心したのか、息を吹いてカンテラの火を大きくすると地面に置き、その前にノートと「入学願書」を広げました。

巻き揚げ機のワイヤーに木で作ったフクベをぶらさげて、一種のバケツコンベアーを作り、これを導入すれば今の5、6倍の能率があがるだろうと、得意気に話すのでした。

ところが私は、だらしなくも涙ばかり流してしまいました。

「ご苦労さま。トンムは……本当に……」

こう言ったものの、私の気持ちの百分の一も表れていないと私自身思いました。でもそのとき、チルソントンムのやせこけた顔がぱっと赤くなり、あわてて手をふるんです。

「か、かんちがいしないでくれ。これは僕一人の考案じゃないんだ。みんなの意見をまとめただけなんだから。僕はただフクベの大きさと数、運搬距離、巻き揚げ機の動力などに必要な数字を得ようと、この石頭をしぼっただけなんだ。そうしてやっとのことで、公式を本から探し出したんだが、無知な僕にはとてもとても……」

「じゃ、どうやって?……」

「恥をしのんで昨夜、連隊指揮部をたずね、技師のチョントンムを起こして手伝ってもらったんだ。それからここに来て解いたというわけなんだが、いつの間に寝てしまったんだろう……。まったく知識は力だよ……」とかれは並びのいい白い歯を見せにっこり笑うと頭をかくのでした。

兄さん、このときの私の気持ちがわかるでしょうか。こんなトンムに対して、勝手な見方をしていた自分自身に無性に腹が立ちました。それで私はかれに、今まで思っていたことを、洗いざらい打ち明けました。

(つづく)

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