短編小説「海州―下聖からの手紙」24/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳


パクトンムは返事もせずに、

「ちょっと連隊指揮部に電話をかけてくれないか」と言うんです。

「え、電話? なにかあったの?」

「多分そこに行ったと思うんだ、確かめてみよう。安心して……」

「連隊指揮部ですって? いったいなにがあったの? 昼間はいたのに……」

ひょうきん者のパクトンムは普段とは違った口調でぽつりぽつり話し始めたのです。

夜、宿舎に帰ってみたら、チルソントンムが見当たらないと言うんです。食事は一緒にしたようなんだが……。そういえば食事がすんでも食堂の片隅で本とノートを広げてしきりに考え込んでいたチルソントンムの姿を思い出したらしいんです。宿舎では静かに勉強できないからだろうと、そのときはたいして気にもとめず床についたらしいんです。

ところが1時をかなりすぎて、ふと目を覚ましたら寝床があいていたというのです。不安になって食堂に行ってみたらトンムたちはあれから少しして出たというし、仕方なく五万山から擁壁と駅舎建設場、はては大隊部まで行ってみたがやはりいなかったそうなんです。そうこうするうちに、ふと思い当たるふしがあったというのです。それは多分、十中八九は私のところだろう。でなければ連隊指揮部だろう……。昨日の昼、連隊民青委員長がわざわざチルソントンムに入学願書を持ってきて、あんまり意地を張らずに明日の夜までには書いて出すよう話したそうです。するとかれは口の中でぶつぶつ言いながら押し返したというのです。

「最近は機械化案の討議にも参加せず、ひまさえあれば本とにらめっこしていたんだが……」

パクトンムはこうつぶやきました。

「だからかれが願書を取りに行ったというんでしょ……」

私はこの言葉をパクトンムに言うより私自身に問い返すつもりでもらしました。

「いや、そうかもしれん。でも行ったからといって……」

「かけてみましょう……」

私は弱々しくこう言うと、レシーバーを耳に当て、信号機をつかみましたが、すぐに回すことができませんでした。そのとき、先日、私が大学に行ったときの彼の姿と短い会話を思い起こして、そこからなんらかの答えをみいだそうとしたんです。ほんとうに行ったのかしら? この大事なときに仲間を置いて……。

私はゆっくり、そして力強くダイヤルを回しました。番号を受けたのは書記のトンムでした。

(つづく)

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