短編小説「海州―下聖からの手紙」15/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳


ランニングシャツ姿のかれは、地面を掘り起こすのに余念がありません。汗まみれの顔がときどき明かりに照らし出されます。かたわらの木枝に上着とカンテラがかけてあり、その下に水桶と天秤棒が置いてありました。

(どうしたのかしら……かまどでも崩れたから?……ならセメントがあるし、それに土なら食堂の裏にもあるのに、わざわざこんな腐ったボロボロの岩なんかを?)。私は大きな咳ばらいをするとかれに近づきました。ようやく人の気配を感じたかれは私をふり返ると、なぜかきまり悪そうに目をそらすんです。土まみれのかれの姿は、まるで泥遊びをした子どものようでした。

「いったいどうしたの?」

私の質問にかれは、いたずらがばれた子どものようにすっかり狼狽しました。かれは照れ隠しに、真っ黒な手で額の汗をぬぐったんです。結果は言わずともわかるでしょう。私は吹き出してしまいました。かれもつられて苦笑いすると、小さな声で「べつになんでもないよ……」と言いました。

「かまどでもなおすの?……」

「かまど?……、そうなんだ、つまり……」

「まあ、それなら食堂の裏にいくらでも土があるのに……」

「うん、でもあれは……」

こんな曖昧な返事をしながら、かれはまたシャベルを持ちました。

「手伝うわ」

「ありがとう、でもいいよ、君も疲れているだろうから……」

私が桶をかついで上がってきたとき、かれは一心に土を掘り返していました。私は土を両手にいっぱいすくい、桶に入れながら言ったんです。

「みんな、すっかりしょげかえってるわ」

「……」

「このままでは、期日にまにあわないようなの」

「……」

「もしそうなれば、私たちの面目はまるつぶれなのよ」

「……」

それでもかれは、ただ黙って手を動かしているんです。いいかげん頭にきました。無口にもほどがあるわ。それになぜあんなににぶいのかしら?……私、わざと大きな声で言ってやったの。

「昨夜討議してた問題、あれ駄目になったそうよ!」

これを聞いたかれは、ようやく手を休めるとちらっとふり返り、眉をひそめ「そうか……」と弱弱しく答えただけで、また黙々と手を動かすのでした。

(つづく)

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