短編小説「海州―下聖からの手紙」22/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳


そのうえ、この調子では工事が10日ないし半月は送れるというのでした。それでチルソントンムたちはこの数日、寝食を忘れあれこれ合理化と機械化案を考えたものの、これといった方法がないと言うのです。そう言われてみるとみんなの顔はひどくやつれていました。なかでもチルソントンムは頬がこけ、目は落ちくぼんで顔はさらに長く見え、額のしわは年寄りみたいに深い溝を作っていました。それでも本を見る目だけは、相変わらず精気を失わずに美しく輝いているのでした。私は胸が熱くなりました。

(それでまだ行けなかったんだわ……)

宿舎への帰り道、私とチルソントンムはみんなより遅れ気味に歩きました。自然に二人は肩を並べるように歩いていました。かれは照れくさそうにしながらも、笑みを浮かべ擁壁工事の様子を一言二言聞くのでした。そして、私にあまり無理しないようにとも言うのです。そんなそぶりはむしろ、かれのわびしい心を私に感じさせました。

肩をがっくり落とし、なにかにとりつかれたように遠い空をぼんやりながめながらとぼとぼ歩くかれの後姿を見ると、胸がこみあげ優しい言葉でそっとなぐさめたい気持ちになるのでした。

私はそのとき、かれが以前、電話をかけにきて断られ、がっかりして帰ろうとしたときの姿を思い出しました。すると、もしもあのとき電話をかけてあげなかったら今ごろかれも気楽に、こんなつらい目に合わずに大学に行っただろうという考えが浮かんだんです。

(行くように言おう、かれが行くのは当然なことなんだ)

瞬間、こんな考えが頭にひらめきました。

「チルソントンム、昼間も連隊指揮部から連絡があったんでしょ……」

「えっ……」

かれは立ち止まると、なんの話だと言うようにいぶかしげに私をふり返り、やがてわかったというふうにこっくりとうなずきました。せつなそうな表情でした。また黙りこくって歩きだしたかれに、

「試験を受けに出発なさいよ!」と声をかけたんです。

「し、試験を受けにだって?」

ふるえる声で聞き返すかれの顔にはなぜか、驚きとうらめしさのこもった、たまらなくつらそうな色がありありと表れました。かれはわきめもふらず大またで歩きだしました。私はかれの言葉が、私に対する叱責なのか、でなければ苦しい心中なのかわからなかったんです。

(つづく)

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