短編小説「海州―下聖からの手紙」16/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳


私はもうすっかりやる気をなくしました。かといって、このまま降りるわけにもいかず、急いで二つの桶をいっぱいにしました。

それから桶を背負ってかれに「入れてちょうだい」と冷たく言いました。するとかれは、盛ろうとしたシャベルをがたんと地面におろしたんです。

「早く入れてよ、支配人さん」

私は皮肉まじりにこううながしました。

「え?」

かれの目には、さみしそうな色がありありと見えました。でもやがて口もとにかすかな笑みを浮かべると、

「トンムまでがそんなふうに……しかたない、本当のこと話すよ……」

「本当のことですって?」

かれは上着のポケットからタバコを取り出すと、カンテラにあて火をつけました。

「ミョンヒトンム、実はこの土が、われわれの工事を期日内に完成する鍵なんだ……」

「えっ、この土が?」

私は、ただぼうぜんとして、かれの顔を見つめました。チルソントンムはニヤニヤしながらむっくり立ち上がりました。

私は「冗談もほどほどにしてよ」と言いたくなりました。でもかれの誠実なまなざしを見るとからかっているようには思われなかったの。

「それはどういうことなの?」

「ブロックを作るんだよ、これで」

「ブロックを?」

私は頭がボーとするのをおぼえました。

「そう、ブロックだ。これがうまくいくと、駅舎や機関区、保線区、転車台など、すべての建物を、今のレンガ造りでなくブロック組み立てにすることができる。すると労力を半減しても半月はかるく期間を短縮できるというわけさ。ほら、これ……」

調子づいてかれは、上着のポケットから大きなノートを取り出しました。かれの顔は赤く上気し、語調はだんだん熱気を帯びはじめたんです。

チルソントンムはノートを開くと、ややこしい図面と計算を土のついたふしの太い、長い指であれこれ示しながら話すのでした。かれの説明によると、この「泡沸石土」は少量のセメントと粘土に混ぜると、自然石に劣らない強度があること、ブロックを作り建築に導入すれば労力を大幅に橋梁工事にまわせること、そうなると7月末どころか、半月は早く完工できるということなんです。いったいいつの間にここまで研究したのかしら……。確信に満ちたかれの話を聞きながら私も、かならずうまくいくだろうと思いました。

(つづく)

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