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短編小説「海州―下聖からの手紙」12/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳

2022年06月29日 09:00 短編小説

ヌーボーとしたかれのどこにあんな美しい気持ちと素晴らしい情熱がひそんでいるのかしら? 私はいつかかれに「どうしてトンム、この突撃隊に……」と言った分の言葉を思い出し、自然と顔が赤くるのでした。(なにしろ変わり者だわ)

兄さん、つづけます。

その後、私たちの建設事業は断然、燃えあがりました。もちろん、はじめから空を飛ぶようにはゆきませんでした。さて、みんなが討議の末、決議したのは来年5月の竣工計画(それも日帝時代より3~4年も短縮したものだけど)を3度短縮して、今年の7月末には開通させようということなんです。省から来た技師や一部の人たちは目を丸くしました。でも私たちの決議がただの思いつきならいざしらず「設計」と「計算」にもとづいたものですから何も言えなかったのです。

決議と合理化案、創案と発明など、青春のあらゆる知恵と情熱が一つとなって、この海州―下聖80キロに奇跡的な成果があげられているのを、兄さんも新聞、ラジオでよくご存知でしょう。

そんなある日、昼の勤務を終えた私はいつものように、休息をとらないで桶を背負って「忍び作業」に出かけたんです。

その頃、私には不満がいっぱいでした。食堂の「緊張状態」が緩和すると「突撃隊」は解散し私はふたたび交換台に戻ったのですが、海州―下聖の工事を志願したときから交換手をする気など毛頭なかった私ですから、他の二人とともに幾度も大隊長にかけあい、しまいには抗議もしました。ところが、

「君たちが現場に出てしまったら、全大隊が突然言葉を失うのも同然なんだ……。よし、じゃあ交換台を自動化して好きなようにしたまえ!」

と、逆に高飛車に出られたんです。そこで思いたったのが「忍び作業」だったんです。非番時間にこっそり現場に出て橋梁工事を手伝うのです。なぜ「忍び作業」なのかと言うと、幹部に見つかると追い出されるからなんです。私たちだけでなく間接部門のトンムたち、はては基本中隊のトンムたちまで「忍び作業」を見つけられ「責罰就寝」を課せられたりするのです。「責罰就寝」という言葉もはじめて聞くと思います。つまり「忍び作業」の時間の分、起床時間を強制的に延ばす、みんながもっとも嫌がる責罰なんです。そして、そのときには監視の者まで立てるのです。

その日の夕方も灯の下、橋梁工事現場では夜間当番のトンムたちがきびきびと働いていました。

(つづく)

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