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短編小説「海州―下聖からの手紙」3/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳

2022年06月11日 09:00 短編小説

その上できあがった飯からはプーンといやな臭いがするので管理局の検車区から来たひょうきん者のパクさんなどは、鼻をつまんで食べるほどでした。女なの細腕では、ばけもののような釜を扱うのははじめから無理なことだったんです。

青年社会主義建設者たるものが、食事にふりまわされて仕事が手につかないなどと世間に噂され、もしそれが首相同志のお耳にでも入ったときにはなんと弁明しましょう!

「抗日パルチザンはあらゆる艱難辛苦をものともせず、15年間、銃を手に戦ったというのに、おれたちは朝から晩まで飯食う騒ぎに明け暮れているとは……」

こんな言葉が出はじめたかと思うと、食事を「ボイコット」して作業に出る小隊が現れたんです。そして空腹をまぎらわすために一輪車に菓子をゴッソリ山積みしはじめたんです。食事抜きで作業に出ると規律違反で追及するという大隊長の厳命もなんのその、一輪車はひっきりなしに売店へ押しよせるのでした。

そこでこの事態を収拾するために4日目の午後、食堂テント前の空地で「食堂突撃隊」組織を討議する大隊民青会議が開かれたんです。実のところ初の突撃隊が「食堂突撃隊」だったとは恥ずかしい話だけど仕方のないことだったんです。

大隊長同志は食堂の苦しい現状を説明し、この難問を解決するには、「食堂突撃隊」を組織して当分の間、食堂の仕事に責任をもつよう強調し、率先して志願するよう呼びかけたのでした。

けれどもすぐさま進み出る者はいません。私も迷いました。

でも知らんぷりできるでしょうか。一度苦労を覚悟して出たんだし、女の私が敬遠していったい誰がと、こう思って私は進み出たんです。するとあちこちから6、7人の女の子が後に続きました。ところが男性群には一向にそんな素振りがないんです。私はかれらの安っぽい自尊心に内心腹立たしさを覚えました。

「フー、か弱いこの女性7人で突撃隊になるものかね……」

すると、大隊長のこの言葉を待っていたかのように、最後列の誰かが、「あのう……僕でもいいんでしょうか?」

と立ちあがったんです。許しでも乞うような少しおどおどした口調でした。

「誰だ?……」

大隊長はうれしそうな声をあげました。

「ソ・チルソンです」

「なにっ、チルソンだって?」

(つづく)

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