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短編小説「魚のために道をひらこう」32/陳載煥

2022年04月26日 08:00 短編小説

彼は両手に魚を一つずつつかんであっちこっちに駆け回りながら叫んだ。

4軒の養魚工の家族もみな河辺へと飛び出してきた。夜がすっかり明けはじめた。彼は息もたえだえにパクパクやっているニジマスの口を割き、はらわたを取り出してみた。肉眼ではどうやら内臓の病気らしくも見えない。ニジマスの目玉をえぐり皮をはいでみても、何の異常も認められなかった。

本場へ電話をかけた。刻々浮き上がる魚の数は増えるばかりであった。

「なんで水に入ってくるんだ。さっさと出ていかんか!」

男も女も子どもまでが、みな心配して河に入ってきてはぽちゃんぽちゃんやるのを見た彼は、彼らに八つ当たりをした。ぷくんぷくん浮き上がってくるニジマスを見て、子どもたちはびっくりしてぶるぶる震え、女たちは悔し涙を流していた。

やがて遠くから自動車のエンジンの音が響いてきた。一同は走ってくるトラックを見つめた。

「技術指導員に来てくれと言ったかい?」

彼は電話をかけた人に小声で聞いてみた。

「いいや、でも来るつもりなら来るだろうし、いやなら来ないでしょう……」

これを聞いたテソンの妻が叫んだ。

「技術指導員が何しに来るんですよ! うまくいっているのを見て顔色を変えた人が、喜んで踊りでも踊らなきゃ上出来だ!」

トラックが近づいてきた。トラックが停まらないうちに人々は飛び降りて河岸に駆けつけてきた。

「なんてこった!」

彼らは異口同音に叫んだ。彼はなんとも答えず、流れていく魚を見つめていた。

ジュンハも来ていた。運転台から降りて彼のわきに駆けてくると、とがめるような厳しい口調で矢継ぎ早に質問を浴びせた。彼はごく簡単にその質問に答えていた。

「汚水の流入は?」

「なし」

「外来者は?」

「なかった」

「飼料は?」

「異常なしだ」

「皮膚の状態は?」

「いきいきしている」

「それじゃあ、どうしたっていうんだ」

「そこですよ。私が起きてみたらこのざまだ。1年育てた5万尾が全部……」

(つづく)

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