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短編小説「魚のために道をひらこう」28/陳載煥

2022年04月18日 09:00 短編小説

6章

ジュンハがまた出張に出かけた後、テソンは養魚場に提起して、飼料工である妻もふくめて5人で管理する分場を作った。

彼は河を九つに区切ってそこへ5万尾の稚魚を放流した。魚を新しい池に放す前には当然、水に対する化学的分析と、河の両岸の土の状況を調査することになっていたが、自然養魚に頑強に反対しているジュンハは、分場建設に自分がハンコを押さなかったから干渉したくないという理由で調査を拒絶した。テソンはいろいろ考えたあげく、10尾ほどのニジマスを河に放って何日か経過を見ていた。放たれたニジマスは、養魚池にいたときよりずっと活発に泳ぎまわり健康状態もすこぶる良好であった。彼はこれを見て、初めて5万尾を河に放した。

放流されたニジマスは、驚くほど成長ぶりがよかった。稚魚を放してから数カ月の間、彼はまるで魚のように河から離れようともしなかった。水に浸りどおしのすねはひびが切れてガサガサになった。それを見た同僚たちは、こう言って彼をからかった。

「テソンさん、いいかげんに出てこいよ。体にうろこが生えたところをみると、今に足がひれになっちゃうぜ!」

そう言われても彼は、腰をかがめて水の中を見ていたが、

「いっそのこと、ニジマスになってしまったら望みがかなったというものだよ。数億のニジマスを引き連れて河に出ていけば、自分で困難を切り拓いていけるんだがなあ……」と言ってからから笑っていた。

河に稚魚を放した彼の気持ちは、初めて懐妊した若妻が胎児の動きを感じるたびに恐れたり、母となる喜びに浸ったり、小さな音にも驚いたり、うっとりとしてとりとめのないもの思いにふけったりするのと同じようであった。

彼は身を粉にして働いた。オタマジャクシやカエル、ミミズやうじ虫などを捕まえてきてはみなが持ってくる米ぬか、また妻が指先に血をにじませてつんでくる木の葉をきざんで混ぜ合わせてこしらえたエサをニジマスに食べさせた。ここのニジマスには、初めから一切れの鮮魚も食べさせる必要がなかった。彼は河辺にびっしり木を植えて枝にたくさん電灯を吊るした。するとニジマスは木の下から離れようとはしなかった。

昼は灼けつく陽をよけるために、夜は明かりをしたって飛んできて水面に落ちた昆虫を食べるために集まってくるのであった。彼はまた、酸素を発生させるために落差をつけてやった。魚は生気はつらつとしていた。

(つづく)

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