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短編小説「魚のために道をひらこう」29/陳載煥

2022年04月20日 09:00 短編小説

彼は猟銃を買ってきて、サギやカラスなどを撃ち落としては魚に食べさせた。彼はニジマスの好むものは何でも与えるように努力した。こうしてニジマスは、1尾も病気にもかからず河でどんどん大きくなっていった。彼は5万尾を1尾も死なせず3年間育ててから各地に送ろうと決心していた。

残暑の頃にひどい洪水があったが、ニジマスは驚くほど早く成長して秋が来ると柳の葉ほどの大きさになった。3年もたてば石油缶一つに入っていた5万尾の稚魚は、365日の間、毎日40台の荷馬車で運ばねばならなくなるだろう。農事にしてもこんな割りのいいものがあろうか?

晩秋に入ると彼は、分場の養魚工たちとせき止め工事をまたやり始めた。今度は1キロの間隔で河をせき止めながら、8キロぐらい大同江に近づき、来年は12キロほど進んで大同江の本流に達し、一方、今の養魚池から養魚場の源までの16キロも残らず魚の池にしてしまおう。そうなると、彼の養魚場だけでも河の32キロの間を養魚池に変えることとなり大同江の大きな支流が一つ征服されることになる。彼は、そうなったら自分たちの養魚場を見た人は、だれでも大同江の本流で養魚できるという確信を抱くだろうし、ジュンハのような頑固な反対者ですらも頭をさげるだろうという確信に満ちていた。

彼は石を背負うたびにわれながら体力の衰えを感じ、ためらいがちになるのをいかんともできなかったが、彼は少年のように、はるかな未来に対してさまざまな夢を抱き、その夢が実現する日を待ち焦がれていた。だしぬけに奇想天外な質問をだれかれの別なく浴びせては驚かせたものである。

実は2キロにもならぬ河で魚を放し飼いにしようとしているが、彼の構想は支流まで加えると数千キロにのぼる大同江に魚がうようよする日を描いていた。だが5人で1キロ区間の養魚場を管理するのにこれほど忙しいのでは、数千キロの自然養魚場を管理するとなったら、どれほどの人員が必要なのであろう。すべての河川や湖が飼育場になったら、3千万人が残らず自分のようにすねにうろこを作って、水に浸かって暮らさねばならないのだろうか? こう考えるとどうもわからなくなってきた。そこで水産技術学校にいる息子に手紙を出した。息子からはひじょうに心地よい返事が届いた。彼は、息子の言葉をそのまま信じた。手紙には大体、こんなことが書いてあったのだ。

――将来、朝鮮の河は、水力発電所のダムとなり勤労者の憩いのためのボート場となり、それ以外には使われないだろう。遠からず船の動力は魚の嫌う油を使わず原子力に代わるだろう。船は河いっぱいの魚に害を与えないように、氷上をすべるソリのように水面すれすれに快速ですべる飛行機船が往来するようになるだろう。河はダムでいくつかに区切られるだろうが、それは気候風土に合う魚を配置する区域になるだろう。

(つづく)

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