公式アカウント

短編小説「魚のために道をひらこう」37/陳載煥

2022年06月10日 08:00 短編小説

ジュンハは興奮を抑えながら室内の養魚工たちに、じゅんじゅんと話し始めた。

「自然養魚が可能かどうか、これはテソンくんの自然養魚場を見た人なら何の疑問も起こらない。テソンくんは、すでに大同江の支流を征服したし、本流へ進出する橋渡しを始めた。われわれのニジマスの群れは狭い池から、広くて長い河へ出ていくだろう。また、その日を待ち望んでいる人民は、瞳のように河を大切にし、管理し、保護して魚の群れに閘門を開いてくれるだろう。

昨日、突発した事故は、雪解けによる汚水の流入ではなく、技術管理をしなかったために起こりうる偶発的な現象なのだ。私は、このような現象から魚を護ってやろうとはせず、テソンくんの意見に反対し、対抗してきた。みなさんがもしこの私を許してくれるなら、われわれのニジマスを大同江、清川江へ進出させるその日まで、私は、みなさんと一緒に力いっぱい働きたいと思っている。テソンくん!」

テソンはもの憂そうに、まっすぐに寝ていた。くぼんだその目には、清らかな河の水があふれるようにおしよせてくる。そして5万尾のニジマスの群れが泳ぎまわる河が現れた。彼は目を閉じたまま、ゆっくりした口調で言った。

「私を生き返らせてくださって、ありがとう。さあ、河へ行こう!」

ふとんの中でテソンの手がしきりに動いていた。ジュンハは両手でテソンの部厚い温かい手をぎゅっと握りしめた。

◇◇◇

水も、空も、青く澄みきった秋が来た。

養魚工たちの手で、テソンの分場は3倍に拡張され、自然擁護場はりっぱにできあがった。養魚場の土手は、なお4キロばかり本流に近づき10万尾の稚魚が放し飼いにされた。

真新しい麦わら帽をかぶった二人の男が連れだっていつも養魚場を見まわり、養魚工に指図をしていた。彼らは、きれいな水の中でピチピチはねるニジマスを見ながら、笑ったり意見を交わし合ったりしていた。支流の一番下手の土手下に群がっている魚は、土手の向こうのとうとうと流れる大同江の水を恋い慕っている。ニジマスの群れが、この土手を越えて大同江に群がり出ていく日もそう遠いことではないだろう。

養魚工は、魚の群れをひきいて河に出ていく。人々よ、魚のために道をひらこう!

(おわり)

短編小説「魚のために道をひらこう」記事一覧

Facebook にシェア
LINEで送る