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〈青商会、挑戦と継承の足跡〉Ep.11 震災を乗り越え一つに (1)

2023年06月16日 07:55 在日同胞

青商会が東北を盛り上げる

宮城、福島、青森、岩手、秋田、山形の東北6県青商会が共催した「ウリ民族フォーラム2012in宮城」(12年6月24日、宮城・仙台市民会館)。中央青商会の洪萬基会長をはじめ各地青商会の会員ら1600余人が参加した。

東日本大震災から1年。最も被害が大きかった東北の地で開催されたフォーラムのテーマは、「心を一つに! 切り拓こう!東北同胞社会の未来」。ここには、震災からの復興過程で深く知った同胞社会の貴重な財産である愛族愛国の精神、相互扶助と団結の伝統、東北同胞社会の未来を青商会が主役となり開拓していく覚悟と決意が込められていた。

宮城フォーラム実行委員会の発足式(2011年10月15日)

東北でフォーラムを

フォーラム開催の5年前、2007年に東北地方の同胞社会を揺るがす事態が起きた。同胞社会の拠点として大きな役割を担っていた東北初中高の高級部休校が決定されたのだ。この措置は、東北同胞社会全体の行く末にさまざまな問題を突き付けた。東北の民族教育はどうなるのか。同胞社会の活気が失われていくのではないか…。学校所在地の宮城県青商会メンバーにも動揺が走る。「民族教育の未来と同胞社会のために何か行動しなければ」という認識はあったものの、同胞社会の展望と子どもたちの未来を不安視するだけで、具体的な行動を起こせずに「議論止まり」の状態が続いていた。

奮起したのは、当時、宮城県青商会で会長を務めていた金龍海さん(中央青商会副会長)。「東北には青商会がない県もあり、東北地方の青商会全体のパワーが正直、弱かった」。しかし、手をこまねいているだけでは何も始まらない。中央青商会の役員を兼ねながら各地の青商会を訪ね歩く過程で、さまざまな活動実態を見聞し、同胞社会と子どもたちの未来に向けて東北を盛り上げたいという思いが徐々に深まっていった。自分たちも何かしなければ…。
金さんは、宮城県青商会の会員たちへ、胸に秘めていた構想を打ち明ける。

「宮城、そして東北の青商会も大胆な活動を展開しよう。同胞社会を活性化し、ウリハッキョを発展させるためにも、東北でウリ民族フォーラムを開催したい」

東北でフォーラムをやる――。しかし、金さんの構想を聞いた宮城県青商会のメンバーたちは、すぐに賛同することができなかった。青商会結成以来、東北ブロックでフォーラムを開催した地域はない。…本当に東北でフォーラムをできるのか?
「フォーラムは参加するもの…というのが、当時の宮城県青商会メンバーの意識だった。自分たちが開催する、という発想はなかった」(柳漢成さん、宮城フォーラム実行委員長)

金龍海さんは諦めることなく宮城県青商会のメンバーに発破をかけ続けた。他の地域も呼応する。中央青商会のサポートを得ながら2008年に山形で、続く2009年に秋田(青森、秋田、岩手県青商会による北東北青商会も同時に結成)で地域青商会が結成されたことが追い風となった。福島県青商会(1996年結成)を合わせ、これで東北6県すべてに青商会の組織的な基盤が整った。

北東北・秋田青商会結成総会(09年7月1日)

受け継いだ思い

青商会の力で東北同胞社会を盛り上げようという機運が徐々に高まってきた中、柳漢成さんは2010年に宮城県青商会の会長に就任する。両手には「東北でのフォーラム開催」という金龍海さんから受け継いだバトンが握られていた。東北ブロックに隣接する茨城(09年)、北海道(10年)で開催されたフォーラムを直接見たことも、柳さんをいっそう刺激した。

「千葉や岡山など中小県と呼ばれる地域でもフォーラムを開催し、茨城と北海道も大成功を収めた。東北ブロックがフォーラム未開催の空白地帯であることを情けなく感じていた」。フォーラムで得た感動を東北地方の同胞たちにも感じてもらいたい。フォーラムの準備過程で培う経験や開催後に同胞社会が活性化されていく勢いを目の当たりにし、地元で必ずフォーラムをやろうと気持ちが固まった。

宮城県青商会メンバーの中には、東北ブロックでのフォーラム開催について懐疑的な声も少なくなかったが、半ば強引に柳さんは押し切った。フォーラムを開催すればきっと何かが変わる。金龍海さんをはじめ土台を作ってくれた先輩たちの思いに応えたい。やるなら今しかない。東北ブロックの総力を集めて開催しよう――。

2011年のフォーラムは、すでに岐阜での開催が決まっていた。次は俺たちだ。柳さんは、2012年のフォーラム開催へ立候補する意向を中央青商会に伝えた。青商会の力で、東北同胞社会を活性化させたい――その一心だった。

そして、東北ブロックでのフォーラム初開催に向けて、宮城県青商会が協議を重ねていた2011年3月――。東日本大震災が東北地方を襲った。

(つづく、韓昌健)

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