公式アカウント

運動にみる真相究明の歴史/関東大震災朝鮮人虐殺から101年

2024年05月01日 08:00 歴史 総聯

解放新聞(1946年9月1日付)

関東大震災(1923年9月1日)の発生後から今日に至るまで、当時あった朝鮮人虐殺の真相究明と日本の国家責任を追及する行動、犠牲者たちの追悼事業が展開されてきた。被害の当事者である在日朝鮮人たちが100年間にわたり、これらの運動をどのような状況下で繰り広げてきたのかを振り返る。

震災から約1ヵ月後、同胞たちと諸団体が協力し合い「罹災同胞慰問班」(以下、慰問班)を結成。慰問班は、同胞の安否確認や救済、犠牲者数の調査を進めた。同班は調査の結果として『独立新聞』に犠牲者数6,661人を記録した。

この発表と並行し同年12月には大会や追悼会が立て続けに開かれた。犠牲者数の発表、日本政府に虐殺の責任を求める声明書の決議や、9月1日を「日本虐殺記念日」に制定するなどして、翌年からは「記念日」闘争を軸とした真相究明・責任追及の動きが活発になった。

100年前の1923年9月1日以降、関東各地で多くの朝鮮人が虐殺された

その一方で、官憲をはじめとする治安当局による弾圧行為も厳格さを増した。同胞たちの運動には常に弾圧による制限が伴い、30年代から解放後まで粘り強く継続したが、運動の機運は次第に落ち込まざるを得なかった。

45年の祖国解放後、朝連(在日本朝鮮人連盟、10月15日)が結成されると、虐殺の真相究明・責任追及の動きは再び熱を帯びる。20、30年代の関連運動を牽引した人物たちが朝連の幹部に就任し、真相の公開と謝罪・賠償、責任者処罰を求める活動が各地で展開された。

しかし、解放前と同様に、かかる在日朝鮮人運動は弾圧や規制の中で行われ、49年に朝連が強制解散を強いられる中で、これらの試みは暗礁に乗り上げた。

総聯結成から今日まで

東京本庄近辺の路上にて、同胞たちの死体はあちこちに投げ出されていた

55年に総聯が結成されると、在日朝鮮人たちは60年代にかけて民族教育権擁護闘争や帰国運動、「韓日条約」の締結反対運動を盛んに行った。

そうした中、総聯は機関紙などを通じ、過去清算をうやむやにさせまいと関東大震災朝鮮人虐殺時の日本政府の責任を強く求め続けた。また、朝鮮大学校が63年に発刊した『関東大震災における朝鮮人虐殺の真相と実態』には、被害者の証言が多数収録された。

70~80年代に入ると、総聯は共和国との連携をより強めながら、日本の友人たちと共に強制連行の真相調査を行い、証言も収集した。2、3世が増加するなど、在日朝鮮人社会に変化が見られる中、この頃から、追悼事業に加えて、震災発生日の前後に講演会やシンポジウムなどの関連行事が行われるようになった。

荒川河川敷で行われた「関東大震災時に虐殺された朝鮮人の遺骨を発掘し追悼する会」による遺骨発掘事業。(82年9月、日本の教員と証言者らがスコップで掘っている)

この時期の機関紙では、追悼行事に関する記事が紙面を大きく占めるようになり、同胞社会の当時の虐殺に関する問題意識の高まりが見て取れる。また、83年の震災60年などを機に、同胞たちは虐殺当時から変わらない日本の朝鮮に対する弾圧政策を繰り返し糾弾し、震災時を教訓とした民族的尊厳と自主性を固守するべく闘争が繰り広げられた。

90年代から2000年代にかけては、関東大震災朝鮮人虐殺を目撃した体験者の文戊仙さんの人権救済申し立てを受け、03年、日本政府に対し、国家責任を認め、犠牲者・遺族への謝罪および真相究明を求めて日本弁護士連合会が勧告を出すなど、日本の植民地支配当時の蛮行に対し、真相究明と心からの謝罪、補償を求める主張が絶えず上がった一方で、新たに歴史を継承する重要性が語られるようになった。追悼行事では青年世代の同胞が代表者として発言するようになり、歴史を風化させず次世代に繋げるための運動にも重点が置かれた。

10年代から今日にかけては、追悼および真相究明、記憶の継承を推進する活動がより活発になったことが、機関紙での朝鮮人虐殺と関連した記事数の増加から伺える。

このように運動史を振り返ると、在日朝鮮人たちは震災後から今日に至るまで、真相究明・責任追及のためのアクションを年代ごとの社会的な背景に合わせてほとんど絶えず展開してきたことが分かる。これらの運動史を経て、関東大震災100年を迎えた昨年には、真相究明・責任追及の行動と追悼事業、次世代が主催する学習会、デモなど幅広い活動が行われた。

一方で、未だ当時の清算が全く滞っている現状の背景には、震災当時から在日朝鮮人たちの言動を封殺し、虐殺の事実を隠ぺいし続ける日本政府が存在する。約6千人もの犠牲者を生んだ関東大震災から101年目を迎えた今、日本政府そして社会に向けて、歴史を省み、当事者たちの叫びに応答することを求める運動が必要となるだろう。

(朴忠信)

参考文献

  • 鄭永寿「植民地期在日朝鮮人運動による関東大震災朝鮮人虐殺の真相究明・責任追及の試み」『大原社会問題研究所雑誌』2023年11月号
  • 琴向芽『関東大震災時の朝鮮人虐殺をめぐる解放後の在日朝鮮人運動の展開―朝連、民戦、総連 の機関紙分析を中心に―』
  • 2023年度朝鮮大学校・文学歴史学部歴史地理学科3年『関東大震災朝鮮人虐殺に対する在日朝鮮人運動100年史―総聯活動を中心に―』
Facebook にシェア
LINEで送る