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短編小説「魚のために道をひらこう」37/陳載煥

ジュンハは興奮を抑えながら室内の養魚工たちに、じゅんじゅんと話し始めた。 「自然養魚が可能かどうか、これはテソンくんの自然養魚場を見た人なら何の疑問も起こらない。テソンくんは、すでに大同江の支流を征服…

短編小説「魚のために道をひらこう」34/陳載煥

「毒がある! 気は確かか!」 ジュンハは彼の常軌を逸した行動に色を失い、急いで彼を引きとめたがすでに柄杓1杯ほどの水を飲んでしまったテソンは、ぼんやりした目で青い山並みの向こうの澄みきった空を見上げて…

短編小説「魚のために道をひらこう」33/陳載煥

ジュンハは河の真ん中に突っ立って落ち着きはらって魚を見ていたが、連れてきた技手たちと水域の検査を始めた。 そうしているあいだにも、魚はぞくぞく浮き上がった。 ひとまず視察を終えたジュンハは岸へあがり、…

短編小説「魚のために道をひらこう」32/陳載煥

彼は両手に魚を一つずつつかんであっちこっちに駆け回りながら叫んだ。 4軒の養魚工の家族もみな河辺へと飛び出してきた。夜がすっかり明けはじめた。彼は息もたえだえにパクパクやっているニジマスの口を割き、は…

短編小説「魚のために道をひらこう」31/陳載煥

ジュンハはテソンに会いたくはなかったが、論文のためにはやむをえなかったのである。 ジュンハがゆっくりゆっくり岸に沿って下ってくると、ニジマスの群れが彼を追ってくる。ここは、5、6カ月前にテソンを探しに…

短編小説「魚のために道をひらこう」30/陳載煥

40キロ以上の一区域には養魚工は5人以下で足りること、補充飼料を作る工場に飼料工が1人、飼料を与え池を見まわり魚の生活を統制指揮する飛行機に搭乗する養魚工1人と、飼料と魚の健康状態を担当する魚の医師1…

短編小説「魚のために道をひらこう」29/陳載煥

彼は猟銃を買ってきて、サギやカラスなどを撃ち落としては魚に食べさせた。彼はニジマスの好むものは何でも与えるように努力した。こうしてニジマスは、1尾も病気にもかからず河でどんどん大きくなっていった。彼は…

短編小説「魚のために道をひらこう」28/陳載煥

6章 ジュンハがまた出張に出かけた後、テソンは養魚場に提起して、飼料工である妻もふくめて5人で管理する分場を作った。 彼は河を九つに区切ってそこへ5万尾の稚魚を放流した。魚を新しい池に放す前には当然、…

短編小説「魚のために道をひらこう」27/陳載煥

「あれは、有害物の流れ込むところですがね。これは480キロの大河の中で何カ所もありゃしない。だからすぐ改められるんですよ。それもせずに、やれ大同江の水は濁ってるの、やれ毒があるのというのは聞き捨てなら…

短編小説「魚のために道をひらこう」26/陳載煥

テソンに同情し慰めてやろうと意気込んでいたジュンハは、苦り切った表情で河をながめていた。養魚場から流れ出ている河が徐々に広くなり、ここまでくると20メートル以上の幅をもつかなり大きな河になっている。草…

短編小説「魚のために道をひらこう」25/陳載煥

ある農民は、テソンが小川で水浴びをしているのを見たという。それは養魚場の源から16キロほどの川下に当たるところだというのである。また、ある郵便配達は河の岸辺に石のかまどを築いて、何か煮ている人の背格好…

短編小説「魚のために道をひらこう」24/陳載煥

「河に行ってはみたものの、鼻柱をへし折られ、面目なくてここへ帰ってこられなくなったんだろう!」 イスにもたれたままジュンハは、にやりと笑いながらこう言った。 足の裏の水ぶくれはすっかり治ったが、かんか…

短編小説「魚のために道をひらこう」23/陳載煥

ところがジュンハは、最後まで踏査をしてみようじゃないかと言うテソンに向かって、いったいそんな必要がどこにある、自分はきみのように休暇中でもないし、仕事はたまっているし帰らねばならぬ、と言いはった。そこ…

短編小説「魚のために道をひらこう」22/陳載煥

もともとテソンは、他人に自分のことを話すのをあまり好まなかったが、父親のような慈愛のこもったこの老人には、ありのままを話したい気持ちがむらむらとおこった。 「私たちは養魚をやっている者ですが、大同江で…

短編小説「魚のために道をひらこう」21/陳載煥

「本当に、何て立派なことをしているんだろう! 私は、どれほどあなた方に会いたかったかわからない!」 彼をとりまいていた人たちは驚いて、スコップやつるはしを放りだすと悲鳴をあげて逃げ出した。すると彼は、…

短編小説「魚のために道をひらこう」21/陳載煥

「本当に、何て立派なことをしているんだろう! 私は、どれほどあなた方に会いたかったかわからない!」 彼をとりまいていた人たちは驚いて、スコップやつるはしを放りだすと悲鳴をあげて逃げ出した。すると彼は、…

短編小説「魚のために道をひらこう」20/陳載煥

待望の、人間に接することができると思うと、彼はまるで子どものようにうれしかった。灯台のように輝いて見える電灯は、彼をおいでおいでと招いているようにさえ思われた。救いの星のように現れたその電灯の下では、…

短編小説「魚のために道をひらこう」19/陳載煥

「そりゃ大丈夫ですよ。便所を作っておけば、道の真ん中で用をたす人はなくなるというものです」 「唯物論者というのは、現実を無視しちゃいけないよ」 頑なに彼の提案を否定したジュンハは、このテソンのいこじを…