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〈青商会、挑戦と継承の足跡〉Ep.11 震災を乗り越え一つに (2)

2023年06月23日 08:54 在日同胞

ALL東北の力で築く未来

東北・関東地方を襲った東日本大震災は同胞社会にも甚大な被害をもたらした。総聯中央は震災発生後、直ちに緊急対策委を設置し、被害状況の把握と支援に努めた。とりわけ緊急を要したのは、現地への救援物資派遣だった。ここでも青商会が大きな役割を果たす。

ネットワークの力を発揮

中央青商会はすぐに動いた。

当時、中央青商会の会長を務めていた姜尚賢さんはこう振り返る。「震災直後は、避難先や被害状況がわからない東北の同胞たちがたくさんいた。困難な状況で威力を発揮したのが、青商会が培ってきた7千人ネットワークの力だった。あらゆる人脈と情報を駆使し、一人ずつ安否の確認を行った。率先して救援物資を届けたのも青商会だった。総聯中央の緊急対策委とタイアップしながら、1週間も経たないうちに最初の救援物資を現地へ届けた」。

中央青商会は、東北地方と隣接している関東地域の青商会へ一斉に連絡し、商工会館(東京・上野)を拠点に物資を収集。たちどころに、2㌧トラック1台分が集まった。その後も各地から続々と物資が届き、さらに4㌧トラック1台分を確保した。

救援物資を乗せたトラックは、震災から3日後に東京を出発した。瓦礫があふれる道なき道を走破しながら、まずは福島地域を回り、続いて東北初中へ、いち早くたどり着いた。中央青商会の協力を得て03年に結成された「焼肉塾」のメンバーもすぐさま500㌔の食材を用意し、救援活動に合流した。東北の同胞たちは、支援隊を涙で迎えた。

救援物資を積み込む「焼肉塾」のメンバー

フォーラム開催を決意

全組織を挙げての復興支援活動が続けられる中、2012年のフォーラム開催に立候補していた宮城県青商会の柳漢成会長は悩んでいた。先を見通せない状況のもと、これからどうなってしまうのかという不安が毎日のように頭をよぎる。フォーラム開催に手を挙げたものの、今はそれどころではない。まずは、この被災状況を何とかしなければ…。

各地の青商会メンバーが毎日のように物資を届けに来てくれる姿に勇気づけられる一方、出迎えるたびに「来年のフォーラム、やるの?」という話題になり、ますます悩んだ。やるべきか、諦めるべきか…。

そんなある日、京都府青商会のメンバーが救援物資を届けてくれた。震災前、2012年のフォーラム開催地として京都も立候補していたことを柳さんは思い出した。「こういう状況なので、東北でのフォーラム開催は難しいかもしれません…」。京都でやってくれませんか―思わず口をついて出た弱音を京都府青商会のあるメンバーが遮った。「こういうときだからこそ、お前たちがやらなければだめだ」。その言葉に柳さんはハッとした。

東北同胞社会を助けようと、各地から届けられる熱い同胞愛、そして相互扶助の精神がもたらす連帯の絆。その思いに報いるためにも、感謝の気持ちを込めて、フォーラムを成功させよう…。開催に及び腰だった宮城県青商会のメンバー内でも「やる」「やらない」の議論が消えた。そこから、再び火がついた。

フォーラムで合唱に出演した東北の同胞たち(2012年6月24日)

東北同胞社会の未来に向け

宮城県青商会単独での開催は考えていなかった。やるなら、東北ブロック全体で。柳さんは宮城以外の東北5県の青商会と幾度も協議を重ね、フォーラム開催への思いを語り、理解と協力を得た。震災被害から日常生活を取り戻す途上であり、さまざまな紆余曲折もあったが、復興を機に東北同胞社会とウリハッキョの未来をより力強く描こうという東北6県の青商会の思いが一致した。中央青商会をはじめ各地の青商会も全面的にバックアップした。こうして、2011年10月15日、「ウリ民族フォーラムin宮城」の実行委員会が発足した。

フォーラム当日は3部構成で行われた。1部のドキュメンタリー公演「ハンマウムコンサート」の出演者たちは、各地同胞の相互扶助精神で展開された復興支援活動への感謝を歌と舞踊などで表現した。2部のKYCトーク「ALL東北! 心を一つに!」では、東北6県の同胞社会が抱える問題と現状をパネルディスカッション形式で紹介。3部のALL東北プロジェクト「切り拓こう! 東北同胞社会の未来」では、同胞社会を取り巻く厳しい現状の中で青商会世代が主役となって東北同胞社会の未来を切り拓いていくための3つのプロジェクトが発表された。

実行委員長を務めた柳さんは「フォーラムを開催してよかった。フォーラム後も東北ブロック6県のスクラムでさまざまな活動が行われている。青商会が主軸となって頑張れば、同胞社会も活力を失わないことを実感した。今回のフォーラムは、各地の同胞みんなの力を集めて作り上げた真のウリ民族フォーラムだ」と語った。

東北で初開催となったフォーラムは、困難に打ち勝つ団結の力と、同胞社会の明るい未来を担うセセデの力強い姿を披露し、青商会の歴史に確かな足跡を刻んだ。

(つづく、韓昌健)

  ※文中の人物に関しては、当時の役職を掲載しています。

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青商会、挑戦と継承の足跡