〈学美の世界 21〉作品のリアリティーと実感/朴一南
2020年08月21日 16:59 文化良い作品には、作者のモノの見方や考え方など表現者としての視点を強く感じる。
何かを感じ取り表そうとした時、視覚的表層では無いリアリティーが生まれる。
リアリティーとは実感であり、実感によってリアリティーが増幅される。
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初級部1年生にとって四つ切画用紙はとても大きい(作品1)。画用紙に大きく足が描かれ、そこへ大量の血! その赤の中に青や紫の画鋲らしき物が鋭く描かれている。 オンマがケガをするという一家の一大事。
それを目撃した女の子であろう作者の戸惑いと心配、驚きが画面に満ちている。是非カラーで見てほしい作品である。
この作品を在日朝鮮学生美術展(学美)米子展で見た、キム・ソギョン、キム・ウンソン夫婦(昨年大きな話題となった世界的に有名な「平和の少女像」の作者)も大変お気に入りのようだった。
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中級部授業作品である(作品2)。
学美大阪展の会場で直接見ることができた。空き缶のプルタブを取った口と缶を軽くつぶした時の表情が擬人化され、それがビールの空き缶と相まってまさに男性合唱である。
現代アートの表現手段の一種で、素材に最小限の手を加え表現する「ミニマル・アート」の作品である。
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中級部美術部生の作品である(作品3)。
審査会場で初めて見た時、その圧倒的な表現力に驚かされた。便利な世の中に慣れすぎた人間のエゴが生み出す異様な近未来、まるで脳神経細胞のニューロンのように何本も伸びる配管と室外機が立ち並ぶ。同じ形が繰り返すことにより増幅され、より強い表現になる心理的効果、感情を押し殺したような青緑だけの冷たい色調、全ての要素がこのことに対する是非、作者の答えと主張を明確に表している。
とても中学生の作品とは思えない傑作である。
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学美史上これほど広く世間に知れ渡った作品は無い(作品4)。
非道な「慰安婦問題日韓合意」に接し行った美術部内の性奴隷に対する勉強会と制作活動、この問題を扱った映画「鬼郷」に作者のアボジが出演、これらがきっかとなり日本軍「慰安婦」問題というとても複雑で難しいテーマに高校1年生の時に取り組んだらしい。
ヘルメットと血走った目だけで表現された兵隊、すべてを奪われあまりにも悲惨な事態に絶望し、幽霊のように悲しみに暮れる女性たち、画面全体の背景に塗られたボンド水。
戦争という特殊な環境は人間の理性を崩壊させる。
決して安易にでは無く、何とか自分なりの造形言語で答えを探し表そうとした痕跡。
学美千葉展では、この絵のレプリカに添えられたコンセプト文が問題となり市からの文化事業補助金がカット、それが平壌の労働新聞、ソウルのハンギョレ新聞に載り、在米コリアンからも反響を呼んだ。昨年話題になった国際展「表現の不自由展・その後」に最年少出品、会場で見ると彼が示そうとしたこのことのもう一つの本質が見えてくる。
「平和の少女像」の視線の先には、この「償わなければならないこと」が展示してあった。
偶然ではないように思えた。
(在日朝鮮学生美術展中央審査委員会委員長・神戸朝高美術担当)
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