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短編小説「労働一家」22/李北鳴

「あの家は、家風がああなんだってよ」 鎮求の隣に住む「髭もじゃ」が、あたかも自分の家の自慢話のように鎮求夫婦のことやら、家庭三角競争の話まで得意になってしゃべった。 「ほう。おもしろい家風もあったもん…

短編小説「労働一家」19/李北鳴

「それは座談じゃなく演説だよ。演説のうちでもお経を読むような演説だな」 そこに参加した親爺さんが後でこう言った。 「なんたって、みんなの前で演説することほど骨の折れることはないって」 鎮求は今まで何回…

短編小説「労働一家」18/李北鳴

「無知は破滅、知識は光明である」「学んでは働き、働いては学ぼう!」 鎮求は解放直後、こんなスローガンを見ては大きな衝撃をうけたものだった。――国の主人となった俺が明き盲とは!学んで学んでまた学ぼう!―…

短編小説「労働一家」17/李北鳴

金鎮求は原型をハンマーで叩きながら、アンモニアがいっぱいに貯えられたタンクと肥料の山を胸に描いてみるのだった。必ずそうなる――こう思いながら彼は、それを製作せよという指示が自分に与えられることを望んで…

短編小説「労働一家」16/李北鳴

「…われわれを解放してくれたソ連軍の協力と、私たちに土地を下さった金日成将軍の恩恵に報いて、国家とあなたたちにより多くの食糧を送るために、私たちは一寸の土地も残さず耕やしています。今年の食糧は心配しな…

短編小説「労働一家」15/李北鳴

「達浩!これを使えよ」 鎮求は、無駄なことをするなと言わんばかりにグラインダーのスイッチを切ってから、彼にバイトを差し出した。 「いらんよ」 達浩は素早くスイッチを入れた。 「俺には新しいバイトがある…

短編小説「労働一家」14/李北鳴

作業開始のサイレンが鳴り終わるまでに、旋盤工たちは各自の機械の前に立っていた。 まだ笑いを含んだ顔も見える。おどけ者の文三洙は、息を激しくはずませながら何回も額の汗をぬぐう。彼は相撲で5人をたて続けに…