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短編小説「澄んだ朝」13/コ・ビョンサム

2022年12月19日 09:00 短編小説

「軍団長トンム元気ですか。声が聞けてうれしいです。すべての戦線にわたって総攻勢にうつるときがきたようです。王手をかけるときがきたのです」

最高司令官同志は、カチカチという秒針の音に耳をかたむけながら、ひびきのある声でいった。

「曲射砲で撃ちまくっている…。よろしい、右翼をうち、正面をたたくのです!」

豪快に笑った最高司令官同志は、軍団長の顔を思いうかべる。つづいて兵士たちのことを、慈愛にみちたまなざしで思い出した。

「1211高地を死守した戦士たち、かれらは何ものにもかえがたい貴重な宝です。その戦闘員一人ひとりはすべてが貴重な革命の戦友です。できるかぎりのことをしてあげなさい。温かいご飯にあついスープが飲めるようにしなければなりません。もやしは十分につくっていますか? 萩枝のざるをつかえばできがよいですよ。よろしい…」

つぎの瞬間、最高司令官同志はもえるような視線を作戦地図の上にそそいだ。

「1211高地をひきつづき鉄壁のごとくかためなければなりません。這いあがってくる敵をたたきこむ陥穽の谷をつくりなさい。

軍事委員会でわたしが提起したとおりにするのです。網をひろく張り、息もつかせず締めつけ、徹底的にたたきのめしてしまうのです。いやそれではいけません、全力を集中しなさい。…それは大へんよろしい。思ったとおりにしなさい。…××戦線にも攻撃命令をだしました。…大へんけっこうです。それから、そこの軍団から大学生をもっと推薦しなさい。…戦争だからこそ必要なのです、もっと送りなさい。こちらではまた新しい仕事ができました。平壌を設計しているのです。何ですか? 力がわいてくるって!それはそうでしょう!軍人たちの中から設計技術家を選抜して送りなさい。多ければ多いほどよろしい。予備部隊から補充して…。食糧と弾丸はすぐ到着するでしょう…。戦士たちにあいさつをつたえてください。」

受話器を置いたままそれをなでていた最高司令官同志は、ゆっくり室内を歩きながら硝煙のただよう全戦線に思いをはせた。

電波はひっきりなしに戦線へとんだ。各軍団から師団へ、連隊へ、中隊へととんでいった。レシーバーをかけた無電手たちの肩は波うち、瞳はきらきらと輝いていた。無電変信紙を握ったり、受話器をもったあらゆる指揮官たちの心は、一つになってもえあがった。電波は瞬時に高地へとび、戦士たちの耳にとどいた。

「平壌市の建設を設計しています!]

「平壌市を設計しているそうです!」

××高地の塹壕と坑道からも同じ声がわきおこった。水を!弾薬を!と叫びながら高地を死守していた戦士たちの瞳は輝いた。戦士たちの硝煙にすすけた顔にはもえるような瞳が赤い光を放つ。硝煙と炎につつまれた塹壕から再び顔を上げた。鉄かぶとが光る。傷ついた戦士たちも頭をもちあげた。頭に包帯をまいた戦士も氷のような鋭い目で再び銃をとった。

(つづく)

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