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短編小説「澄んだ朝」10/コ・ビョンサム

2022年12月14日 09:00 短編小説

軍服を着た青年設計家は、くちびるをふるわせなから顔をふせた。老設計家もこらえきれなかった。かれは息をつくことも話すこともできなかった。全人民にたいするあつい愛情、まるで宇宙を見わたすような最高司令官同志の前で敬たんな思いにつつまれた。

最高司令官同志が、現代の貴重なすべてのものを光りかがやかせていることを、かれは直感的に感じた。

製図板の前で年老いてきた老設計家は、画家の目をそなえていた。きびしく見えたかと思うとそれとは対照的なほどやさしくなる最高司令官同志の目の光と表情を、瞬問的にとらえては逃がし、ただ、大きな姿、大なき英知の前に恍惚としてすわっていた。

最高司令官同志は、博物館にある17世紀の無名画家の絵を例にとりながら話した。

「平壌が開かれたのは427年ですね」

「そうです」

「すると、1524年の歴史をもつわけですね。東方の高度な文化を有していた高句麗は、文物と人材も兼備していました。武芸に秀でた将軍も多く出て随、唐をうち破りました。そしてこの平壌はアメリカの「シャーマン号」(1866年大同江をさかのぼって侵略行為をはたらいたアメリカの船※訳者注)を撃沈したのです。この19世紀の無名画家の絵は、人びとがロバにのって往来していた時代おくれの姿を見せてくれます。そのうえ日本帝国主義の侵略をうけました。日本の植民地統治時代、平壌市は非文化的で奇形的な都市で、不合理な点がたくさんありました」

最高司令官同志は、歴史をふりかえりながら話をつづけ、解放後、民主首都に発展した平壌は集中爆撃をうけながらも死守された英雄的な都市であると強調した。

最高司令官同志は、設計図に書きこまれた牡丹峰や大同江に沿って線を引きながら、ひろい街路はまっすぐのびなければならないと指摘した。

「雄大な都市にするのです。植民地的な奇形性をぬぐいさり、労働者の文化施設や衛生施設などを十分に予見すべきです。交通網と教育文化施設なども現代的なものにしなければなりません。

大同江の数カ所に橋をかけることを予見し、遊歩道をゆったりともうけるべきです。ここに戦勝記念館もたてましょう。子どもたちの少年文化宮殿もよい場所をえらんで大きくたて、劇場の建物は空をとぶ鶴の羽のようにひさしをそらし朝鮮式にすべきです。大学も数十階建てにしましょう。都市の中心部はここにうつしたほうがいいですね。…中心部には広場をこしらえなければなりません」

最高司令官同志は、鉛筆で中心部と東西の輪郭を書きこみながら、設計家たちと慎重に意見をかわした。

「これは…、何とすばらしい大都市でしょう」

老設計家は目をかがやかせながら、ほとんど叫ぶようにこういった。解放以前までは、人民のアパートをたてようという、かれの願いははかない夢だった。

一時は失業者となって街をさまよったこともあった。しかし今では、戦争の炎の中でさえ、こんなにもりっぱな仕事をうけもつ身となったのである。かれは胸をつまらせた。

(つづく)

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