〈民族教育と朝鮮舞踊19〉朝鮮大学校舞踊発表会《이어가자-민족의 대》(「継いでいこう-民族の代」)


「第1回 朝鮮大学校舞踊発表会」を終えて(1990.12.8 体育館舞踊室の前で)

朝鮮大学校には草創期から、主に芸術・教職課程の学生を対象とした「学校舞踊」科目があり、1世舞踊家の金長安先生が非常勤講師として教えられた(1956.4∼64.5)。先生が祖国に帰られた後は、任善喜先生が舞踊科目の授業と舞踊部を指導された(65∼72)。任先生の帰国後、後任として舞踊科目の授業と舞踊部を指導されたのは金成愛先生であった(72∼75)。私は75年から専任として師範教育学部(現・教育学部)の「児童舞踊」「舞踊」科目等を担当し、舞踊部の指導教員としては47年目になる。その間、教え子の李京姫が共に舞踊を教えていたこともある(82∼89)。

朝鮮大学校舞踊部は、大学創立当初からの伝統あるソジョ(部活)である。学部・学科を問わず全校生を網羅して部活動を行ない、総聯の大きなイベントや大学の記念行事、日本の大学との親善文化交流など多くの催しで朝鮮舞踊を披露してきた。舞踊部の卒業生たちは、金剛山歌劇団や地方歌舞団の舞踊手として、また文芸同舞踊部に属しながらその主要メンバーとして活動している。特に、民族教育においてはどの学校にも舞踊部があるが、65年以上ものあいだ絶えることなく舞踊指導教員を輩出してきた。今日の在日同胞社会、民族教育における朝鮮舞踊の普及と活性化は、朝大舞踊部の存在なくしては語ることができない。

「第30回 舞踊発表会」のポスター  2019.12.7

朝鮮大学校舞踊部の定期発表会は、1990年に始まった。きっかけは学生たちの要望であった。当時行われた公演などには選抜された一部の部員しか参加することができなかったので、主将をはじめ最高学年の部員から舞踊部全員が参加する発表会を催せないかとの申し出があった。それはとても貴重な提案で、年間の部活の総仕上げとしても意義があった。早速、第1回目となる舞踊発表会の準備にとりかかった。ところが、その年は講堂の補修工事が全面的に行われたので、体育館2階のアリーナでするしかなかった。舞踊公演は、舞踊音楽、舞台美術など総合的な芸術公演なのに、その効果を一切出せない体育館ではとても不利である。それでも学生たちは意気軒昂であった。

タイトルも「朝鮮大学校舞踊発表会」だけではあまりにも平凡なので、学生たちと発表会のコンセプトを議論し、《이어가자-민족의 대》(「継いでいこう-民族の代」)とすることに決めた。この発表会には、いくつかのこだわりがある。全部員が水準問わず2作品以上に出演すること、祖国の4大舞踊名作をはじめ優れた名舞踊を基本に創作作品なども取り入れ11∼13作品で構成すること、男性舞踊または混成群舞を1作品加えること、3年生が主に役割分担して自主的に行うことなど、舞踊部員たち自身の団結力で発表会を創り上げることを原則にしている。

「第32回 朝鮮大学校舞踊発表会」終演後の記念撮影(2021.12.4)(中央左-韓東成学長、中央右-洪南基理事長)

第1回の発表会は舞台も無く、舞台背景や演出効果も出せず、床に座った朝大生のみの観覧であったが、雰囲気も良く満足度は高かった。そして第2回からは講堂で行われ、内容と形式も洗練されていった。第3回の発表会では朝大管弦楽団の生伴奏で行い、第5回発表会では祖国の4大舞踊名作を披露した。勿論、舞台設備などでの問題点は多かったが、発表会ごとに舞踊部の活動全般が勢いを増していった。回を重ねるにつれて規模も大きくなり、学生たちの保護者や家族・親族、卒業生や友人たちと観覧者はどんどん増えていった。30回目の節目の発表会には900余人が駆けつけ、講堂の座席がびっしり埋まるほどの大盛況であった。学生のオモニたちの中にはこの舞踊発表会の出演経験者もいて、文字通り「代を継いで」いる。ただ、一昨年(2020年)の第31回だけはコロナ禍の中で、平年通りには開催できないことに。観客参加型の公演はできなかったものの、30年の歴史を持つ発表会を中断させてはならないという、学生たちの熱意と創意工夫により動画を撮って配信することができた。この時の経験があり、昨年の第32回は、観客数を制限した対面公演と初のLIVE配信を試みた。

本年もすでに33回目の準備が始まっている。発表会は、単なる舞踊の技術・技量を見せるためだけの場ではない。日本で生まれ育っても悠久な朝鮮民族の文化と伝統、民族の魂を朝鮮舞踊に込めて継承し、在日同胞の次世代の志向に沿って発展させていこうとする、朝大舞踊部学生たちの意志と決意に満ちた公演にすることが目標だ。朝鮮舞踊に魅了され、日々弛みなく練習してきた成果を、学生たち自身がコンセプトに基づいて企画し、作品の選定から構成、演出と衣装や小道具、舞台美術などを分担し、集団の力で創り上げていくのが朝大舞踊部発表会である。文学台本、演出台本、作品伝習と創作、プログラムや案内状の作成、SNSを通じた宣伝、講堂担当の学生やビデオ編集部との打ち合わせなど、3年生が中心となり準備する過程で、一公演を創り上げるノウハウを実践的に習得していく。事実、舞踊部卒業生たちはこの発表会での経験を学校現場で応用・実践している。

「第32回 朝鮮大学校舞踊発表会」(プログラム及びライブ配信の表紙)2021.12.4

舞踊発表会の感想文には、「発表会の趣旨通り、民族性を守っていこうとする気迫と熱意が伝わり感動した」「朝鮮舞踊の素晴らしさと魅力、その完成度の高さが日本でも受け継がれていることに胸が熱くなった」などと書かれていた。発表会を観た南朝鮮の高麗大学校の大学院生は「このような公演を生まれて初めて観た。同じ民族として伝統や文化を誇らしく披露する姿に、言い尽くせない感動を覚え心に深く刻まれた」と述べた。

今年も朝大舞踊部45人(1~3年生)は、舞踊発表会の伝統を継承・発展させながら、世界に誇る優れた朝鮮舞踊を舞台いっぱいに繰り広げていくことであろう。

朴貞順(朝鮮大学校舞踊教育研究室室長)

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