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〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 75〉最終回

歴史、政治、そして文学 今回で本連載は最終回となる。「韓日合併条約」=朝鮮強制占領・完全植民地化100周年を迎えた2010年の2月からはじめた〈歴史×状況×言葉 朝鮮植民地支配100年と日本文学〉(~…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 72〉森村誠一「笹の墓標」

犠牲者の宿怨、未来世代の宿題 11月のはじめ、北海道初中高級学校にて開催された第24回日朝教育シンポジウムに筆者はパネラーとして招かれた。朝鮮学校と日本学校の教員、関係者約200名が一堂に会し、北海道…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 69〉山代巴

被害の物語か、加害をきよめる文学か 〈ヒロシマ〉といえば/〈ああ ヒロシマ〉と/やさしくかえってくるためには/捨てた筈の武器を ほんとうに/捨てねばならない/異国の基地を撤去せねばならない(……)〈ヒ…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 68〉田宮虎彦「朝鮮ダリヤ」

反省と責任をせまる回想物語 田宮虎彦の代表作「足摺岬」(1947)を最近再読し、あらためて力作だと感じた。戦前日本、孤独な知識人の暗く希望のない青春。足摺岬へと自殺行する主人公に、死を踏みとどまらせた…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 67〉薩摩焼と司馬遼太郎

真に「忘じがたい」歴史から見れば 1592年から98年にかけた、豊臣秀吉による二度の朝鮮侵略(壬申・丁酉倭乱)の際、九州・山口地方の諸大名たちによって拉致連行された朝鮮人陶工たちにより、萩焼、上野焼、…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 66〉世界の奈落における読書案内④

奈落から届いた「抵抗=愛」の文学 『現代思想』今年2月号は、特集「パレスチナから問う」を組み、アラブ文学者の岡真理氏は「小説 その十月の朝に」を寄稿した。知人を通じて届けられたアフラーム・ガッザーウィ…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 65〉世界の奈落における読書案内③

抵抗としての、「聞く」こと、「書く」こと 人倫の臨界、言語の限界、人文学(ヒューマニズム)の切り捨てが進行するさなかで、佐藤泉『死政治の精神史 「聞き書き」と抵抗の文学』(青土社、2023年)を読む。…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 64〉世界の奈落における読書案内②

「応答せよ」と呼びかける力、希望 すでに本紙で詳しい紹介記事が出たが、過日、朝鮮大学校では文学作品読書会企画「朝大文学カフェ」にて、岡真理さん(アラブ文学者・早大教授)をお招きし、パレスチナ人作家ガッ…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 63〉現代の奈落における読書案内①

現代の奈落で文学を読む 能登半島地震とともに新しい年が明けた。発災直後からこの1カ月、救助、救援対策において、公助は崩壊し、共助が叩かれ、自助任せの一方で、私利、利権や戦争体制には莫大なカネがめぐる、…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 62〉佐多稲子②

侵略と戦争を防ぐ、反省のあり方 佐多稲子は、1940年6月、朝鮮総督府鉄道局の招待で、壷井栄を誘い朝鮮を旅行する。「朝鮮ブーム」とともに「内鮮一体」「日鮮融和」を促進したい当局の思惑を背景に、佐多も朝…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 61〉佐多稲子①

100年前の「東京地図」を再読する 「工場の汚水の流れ出る曳舟川の紫色の水の上に、うつ伏せに浮いた死体もそのまま。井戸へ朝鮮人が毒を入れたと噂が飛ぶ。一晩中朝鮮人に追いかけられて逃げたという人がいる。…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 60〉関東大震災100周年、朝鮮人虐殺と日本文学②

100年後、再び「羊の怒る時」 100年前の関東大震災朝鮮人虐殺をめぐり、歴史研究、文学、アートなど各分野でさまざまな催しが行われたが、新宿梁山泊による演劇「失われた歴史を探して」(作=金義卿/演出=…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 59〉関東大震災100周年・朝鮮人虐殺と日本文学①

記録・再現・批判としての文学を 関東大震災朝鮮人虐殺から100周年を迎えた。犠牲者追悼と責任追及の各種行事、シンポジウムなどが相次いで開催されている。だが真相究明、過去清算はおろか、日本社会の現実はこ…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 58〉小田実⑤

屈折した空しい欲望の醜さ 小田実(おだみのる)について回数を重ねているうち、ちょうど8月と重なったので、短編小説「折れた剣」についても加えて紹介しておきたい。

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 57〉「難死」をのりこえる一世の「勁(つよ)さ」/小田実④

小田実(おだまこと)の描いた在日一世の「オモニ」の、生活実感における即物性と現実的態度、そして格言のように真理を突く人生哲学の言葉は、「通念に基づくタテマエをまっこうから粉砕する力」を持つ。 日本へ仕…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 56〉おかしく、重く、神々しい「オモニ」/小田実③

小田実(おだまこと)には朝鮮、在日朝鮮人を描いた小説作品が数編あるが、かれが「人生の同行者」と呼んだ在日朝鮮人・玄順恵氏との結婚から、その母親=オモニとの、面白くも、重い「つきあい」を描いた「オモニ太…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 55〉「遠い未来」から見た自主路線/小田実②

「私が『北朝鮮』でもっとも痛切に考えたのは自由のことだった。…(朝鮮社会には自由がないとか、自由はないけど平等はあるというようなありきたりな想念ではなく)私は自分自身についての自由の不足を感じていた。…

〈続・歴史×状況×言葉・朝鮮植民地支配と日本文学 54〉朝鮮認識の基本にたちかえるために/小田実①

「韓国で私はその日(八月十五日)解放記念日の式典を見たことがあるが、はなやかな式典の外で、人びとは飢え、圧政に苦しんでいた。そして、ふしぎなことに、こういう支配者たちと、たとえば佐藤(栄作元首相)さん…