短編小説「魚のために道をひらこう」32/陳載煥
2022年04月26日 08:00
彼は両手に魚を一つずつつかんであっちこっちに駆け回りながら叫んだ。 4軒の養魚工の家族もみな河辺へと飛び出してきた。夜がすっかり明けはじめた。彼は息もたえだえにパクパクやっているニジマスの口を割き、は…
短編小説「魚のために道をひらこう」31/陳載煥
2022年04月24日 08:00
ジュンハはテソンに会いたくはなかったが、論文のためにはやむをえなかったのである。 ジュンハがゆっくりゆっくり岸に沿って下ってくると、ニジマスの群れが彼を追ってくる。ここは、5、6カ月前にテソンを探しに…
短編小説「魚のために道をひらこう」30/陳載煥
2022年04月22日 09:00
40キロ以上の一区域には養魚工は5人以下で足りること、補充飼料を作る工場に飼料工が1人、飼料を与え池を見まわり魚の生活を統制指揮する飛行機に搭乗する養魚工1人と、飼料と魚の健康状態を担当する魚の医師1…
短編小説「魚のために道をひらこう」29/陳載煥
2022年04月20日 09:00
彼は猟銃を買ってきて、サギやカラスなどを撃ち落としては魚に食べさせた。彼はニジマスの好むものは何でも与えるように努力した。こうしてニジマスは、1尾も病気にもかからず河でどんどん大きくなっていった。彼は…
短編小説「魚のために道をひらこう」28/陳載煥
2022年04月18日 09:00
6章 ジュンハがまた出張に出かけた後、テソンは養魚場に提起して、飼料工である妻もふくめて5人で管理する分場を作った。 彼は河を九つに区切ってそこへ5万尾の稚魚を放流した。魚を新しい池に放す前には当然、…
短編小説「魚のために道をひらこう」27/陳載煥
2022年04月13日 09:00
「あれは、有害物の流れ込むところですがね。これは480キロの大河の中で何カ所もありゃしない。だからすぐ改められるんですよ。それもせずに、やれ大同江の水は濁ってるの、やれ毒があるのというのは聞き捨てなら…
短編小説「魚のために道をひらこう」26/陳載煥
2022年04月10日 09:00
テソンに同情し慰めてやろうと意気込んでいたジュンハは、苦り切った表情で河をながめていた。養魚場から流れ出ている河が徐々に広くなり、ここまでくると20メートル以上の幅をもつかなり大きな河になっている。草…
短編小説「魚のために道をひらこう」25/陳載煥
2022年04月08日 11:37
ある農民は、テソンが小川で水浴びをしているのを見たという。それは養魚場の源から16キロほどの川下に当たるところだというのである。また、ある郵便配達は河の岸辺に石のかまどを築いて、何か煮ている人の背格好…
短編小説「魚のために道をひらこう」24/陳載煥
2022年04月05日 06:32
「河に行ってはみたものの、鼻柱をへし折られ、面目なくてここへ帰ってこられなくなったんだろう!」 イスにもたれたままジュンハは、にやりと笑いながらこう言った。 足の裏の水ぶくれはすっかり治ったが、かんか…
短編小説「魚のために道をひらこう」23/陳載煥
2022年04月01日 07:31
ところがジュンハは、最後まで踏査をしてみようじゃないかと言うテソンに向かって、いったいそんな必要がどこにある、自分はきみのように休暇中でもないし、仕事はたまっているし帰らねばならぬ、と言いはった。そこ…