短編小説「海州―下聖からの手紙」5/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年06月15日 09:00
でもどうしようもないので、「それは無理なんです……」 私は一言一言区切るようにはっきり答えました。 「駄目なんですか……」 瞬間、かれの目は大きく見開かれ、両の瞳には失望の色が漂うのでした。かれは何か…
短編小説「海州―下聖からの手紙」4/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年06月13日 09:00
大隊長はいぶかしげに声のした方を眺めました。 「うーむ、トンムか……よろしい」 大隊長はどうしたわけか口元に笑みを浮かべてうなづきました。 (チルソン?)。私も心当たりのある名だったのでよく見ると、案…
短編小説「海州―下聖からの手紙」3/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年06月11日 09:00
その上できあがった飯からはプーンといやな臭いがするので管理局の検車区から来たひょうきん者のパクさんなどは、鼻をつまんで食べるほどでした。女なの細腕では、ばけもののような釜を扱うのははじめから無理なこと…
短編小説「魚のために道をひらこう」37/陳載煥
2022年06月10日 08:00
ジュンハは興奮を抑えながら室内の養魚工たちに、じゅんじゅんと話し始めた。 「自然養魚が可能かどうか、これはテソンくんの自然養魚場を見た人なら何の疑問も起こらない。テソンくんは、すでに大同江の支流を征服…
短編小説「海州―下聖からの手紙」2/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年06月09日 13:04
汽笛を聞く私の脳裏にはこの70日間の悪戦苦闘が走馬灯のようにかけめぐり、それがみなこの一瞬のためにかけられたと思うとまったく感無量でした。 兄さん、ともあれ私たちはこうして首相同志からさずかった任務を…
短編小説「海州―下聖からの手紙」1/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年06月09日 13:04
私は、妹の手紙を公開しようと思う。 そうすれば読者のみなさんにも私の気持ちが理解してもらえるだろう。 1958年、妹は海州―下聖間の青年鉄道建設に参加した。高校を卒業した妹は両親の必死の説得にもかかわ…
短編小説「魚のために道をひらこう」36/陳載煥
2022年06月06日 08:00
みなが駆け寄って彼の体を支えた。ジュンハはベッドのすぐわきにしゃんと立っていた。彼の顔には脂汗がにじんでいたが、鋭い視線で自分を凝視しているテソンの目をまっすぐ見ていた。 テソンは、やっとのことで、ま…
短編小説「魚のために道をひらこう」35/陳載煥
2022年06月03日 08:00
「テソンの言うことは正しい! よく聞きなさい!」 「とんでもない。愚にもつかんたわごとだ」 とっさにジュンハは、テソンのところに詰め寄った。が、このときテソンは、自分が営々としてつくり上げた養魚場をも…
短編小説「魚のために道をひらこう」34/陳載煥
2022年04月30日 08:00
「毒がある! 気は確かか!」 ジュンハは彼の常軌を逸した行動に色を失い、急いで彼を引きとめたがすでに柄杓1杯ほどの水を飲んでしまったテソンは、ぼんやりした目で青い山並みの向こうの澄みきった空を見上げて…
短編小説「魚のために道をひらこう」33/陳載煥
2022年04月29日 08:00
ジュンハは河の真ん中に突っ立って落ち着きはらって魚を見ていたが、連れてきた技手たちと水域の検査を始めた。 そうしているあいだにも、魚はぞくぞく浮き上がった。 ひとまず視察を終えたジュンハは岸へあがり、…