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〈今月の映画紹介〉JFK/新証言 知られざる陰謀【劇場版】/オリヴァー・ストーン監督

2023年12月27日 09:00 時事

隠された謎を暴く

「今月の映画紹介」では、上映中または近日公開予定の注目映画を、月に1度、紹介します。

1963年11月22日、アメリカ合衆国テキサス州のダラス市内を遊説中の第35代大統領ジョン・F・ケネディが、頭部を銃弾で打ちぬかれ暗殺される事件が起きた。米国史上最年少(選挙を通じての就任に限る)となる43歳での大統領就任から約2年後のことだった。国民から大きな期待を寄せられていたケネディの死は、米国内で衝撃を与えた。

© 2021 Camelot Productions, Inc. All rights reserved. Photo: John F. Kennedy Presidential Library, National Archives

当時、事件の調査のために設置されたウォーレン委員会は調査報告書で、元海兵隊員の男による単独での犯行と結論付けた。しかし、ウォーレン委員会の報告には矛盾が散見された。米国内では事件の真相をめぐる議論が相次ぎ、陰謀論などが広まった一方、犯人とされた男は移送中に射殺され、事件の調査は行き詰った。

28年後の1991年、ケネディの死が人々の記憶から薄れてしまった頃、オリヴァー・ストーン監督は徹底的な調査を基に事件の謎に迫った映画「JFK」を公開。これが国内外で大きな反響を呼び、事件は再び脚光を浴びることとなった。本作、「JKF/新証言 知られざる陰謀」は機密解除文書(昨年に米政府が新たに公開)など、更なる資料調査を基に、ジョン・F・ケネディ暗殺事件の謎を深掘りしたオリヴァー・ストーン監督の最新作だ。

© 2021 Camelot Productions, Inc. All rights reserved. Photo: John F. Kennedy Presidential Library, National Archives

ノンフィクションドラマの前作とは違い、本作はドキュメンタリー映画として撮られた。作中では、銃弾の特徴、狙撃の方向、大統領らの傷口など、当時から調査側の報告が不可解であると物議を醸している「魔法の銃弾」(ケネディ大統領と当時のテキサス州知事を同時に貫いたとされる銃弾)、凶器として使用されたライフル銃、犯人とされた男の逃走経路などウォーレン委員会の結論における欠陥が一つひとつ詳細に検証される。また、ウォーレン委員会の元委員が話した調査過程での工作の動きや、事件をその目で目撃した人々、調査に直接関わった人々の証言などが語られ、謎に包まれる事件の全貌が少しずつ正体を現し始める。

何百万ページに及ぶ膨大な資料を丹念に調べ上げた映画制作陣は、本作について「JFK事件のドキュメンタリーとしては、知識と才能が集結した最も包括的な作品」「大統領の殺害を組織的に行い、逃げ果せた権力者たちを捕えることに最も近づけた作品」と語った。

近年、日本国内では政財界で複数の隠ぺい事件が明るみにでた。それは氷山の一角にすぎないだろう。メディアぐるみで隠される真相と、封殺される被害者の声。情報が飛び交う現代だからこそ、その背景に隠れる見えない力を感じ取る力が求められる。

© 2021 Camelot Productions, Inc. All rights reserved. Photo: John F. Kennedy Presidential Library, National Archives

そして、巨大な権力により隠ぺいされる事実を解き明かそうとする制作陣の気概は、過去から今日に至るまで歴史の隠ぺいや歪曲に抗い続けている私たち在日同胞へ勇気と希望を与えてくれるだろう。歴史が軽視されがちな現代で、過去を風化させないために伝えつづけることの重みを痛感する。

11月17日から公開中の映画は来年1~2月まで各地で上映予定。

   (朴忠信)

【配信・放送】

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