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短編小説「澄んだ朝」8/コ・ビョンサム

2022年12月11日 09:00 短編小説

すべてがこの部屋に集中していた。最高司令官同志には1秒の時問の余裕もなかった。すべてが緊迫していた。朝鮮の運命をかけた切迫した質問に、即座に勝利の解答をあたえなければならなかった。設計家たちの胸はますます高鳴った。

最高司令官同志は、設計図を見ながら再び話をつづけた。

「ずいぶん消極的な設計ですね。朝鮮人民の気迫があまり感じられません。勝利した人民の精神と気迫のこもった心臓部として、この都市は立ちあがらなければなりません。朝鮮人民はこの戦争の炎の中で、世界に新しい時代が到来したことを告げるのです」

最高司令官同志はことばをきると、英知にかがやく眼を地図の上にうつした。このとき、また副官が入ってきて何かつたえた。最高司令官同志は力づよい声でつづけた。

「ヤンキーどもがわが物顔にふるまう時代は終ります。すべての大陸にもえあがる革命の炎とはげしい嵐は朝鮮からはじまりました。この朝鮮から…。わたしたちがやらねばならないことはたくさんあります。人が10歩を歩めば、わたしたちは100歩を走らなければなりません。戦争の中でもそのきざしが見えています。わたしたちは人より先に社会主義を建設するという精神で生き、そしてたたかわなければなりません」

アメリカ帝固主義は、朝鮮は再び立ちあがれないとうそぶいた。しかし最高司令官同志は、設計家たちに、この都市を建設する魂を吹きこんだのである。

設計家たちは、大きく息をついた。

戦争の勝利、生と未来にたいする新しい哲学が、最高司令部のこの建物から、ほかならぬ最高司令官同志によって創造されつつあることを目のあたりにした老設計家は崇高な念にとらわれた。強い自責の念にくちびるをかみしめていたかれは、最高司令官同志の思想が自分の体内に入りこんでくるのを感じながら、首をうなだれた。

室内は水をうったようにしずかだった。

最高司令官同志は、低い声でつづけた。

「つぎの欠陥は、朝鮮の特色が不鮮明で、朝鮮の気概がはっきりしめされていないことです。白頭山をわが国のひたい、いや頭だと呼ぶことはできないでしょうか。そう、白頭山はわが国の頭です。そして三方の海、東海、西海、南海は翼のようにひろがっています。敵をうちくだく力づよい翼のようにです。だとすれば金剛山は顔です。そうではありませんか? わたしはときおりわが国三千里の山河を脳裏に描きながら、こんなふうに考えてみたりするのです…」

最高司令官同志は、設計家たちを見まわしながらほほえんだ。

「朝鮮人民は平壌を心臓と呼んでいます。心臓は大切ですとも。心臓であるからには地理的にはもちろん、精神的にも、物質的にも、わたしたちの大切なものすべてがそこに象徴されていなければなりません」

(つづく)

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