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恩師の教えを胸に

2024年03月12日 10:00 取材ノート

最期の瞬間までペンと本を手に持ち、執筆活動を続けたという。恩師である元・朝大外国語学部長の高演義さんが闘病の末に亡くなられた。享年81。民族教育に半生を捧げ、フランス文学者、第三世界研究の第一人者として数々の論文を執筆。著書に『〈民族〉であること第三世界としての在日朝鮮人』(1998)を残した。息を引き取る1ヵ月前、朝大で行われた講演会(既報)には在学生らのために病床から映像形式で出演。生涯最後となる講義を行った。

本人が心がけた「同胞目線」の筆致が、読者の心を掴むのだろう。本紙での寄稿連載「高演義先生の情熱教室」164月~1712月)は毎回大きな反響を呼んだ。ユーモアを散りばめた文章の中には、いつも在日朝鮮人問題や国際問題の核心を突く鋭い分析があった。

筆者が第三世界諸国を旅した経験を連載化すると、誰より喜んでくれたのも高さんだった。「君は同胞社会のコロンブスだ」。褒め言葉の後にはすかさず、「植民地開拓者を引き合いに出してはいけないか」とエスプリを効かせた。大国主義に抗い、弱者に寄り添う自称「小国主義者」、真の国際主義者であった。

「情熱教室」の連載最終回では、在日朝鮮人運動を担う若い世代へのメッセージを綴っている。自身の文章から何かを感じたのなら、各自が行動を起こしてほしい、と。一人ひとりの小さな行動が、歴史を動かす原動力となる。恩師の教えをいま一度心に刻んでいる。

(徳)

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