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短編小説「澄んだ朝」14/コ・ビョンサム

2022年12月20日 09:00 短編小説

首領のために突撃前へ!平壌市を建設するために突撃前へ!工場をたてるために突撃前へ!溶鉱炉で鉄を生産するために突撃前へ!新しい生活と未来のために突撃前へ!心臓からわきあがるおたけびの声がとどろいた。

朝やけに染まった高地ごとに、軍団砲、師団砲がいっせいに火ぶたを切った。まっ赤な砲火が敵の頭上にふりそそいだ。敵の死体でおおわれた谷あいを見下ろし、戦士たちはだきあって万歳を叫んだ。

かん声が天地をどよもす高地のふもとで波をうつ青い波頭が、アメリカ侵略軍のやぶれた軍服から落ちた肩章や軍靴などを遠い沖合へおし流していた。

この日の明け方、軍団長たちは戦士たちの心臓の中でまきおこった波動と意気天を衝く勇猛心がどうして生まれたかについて、戦闘報とともに、最高司令部に無電で送った。

「…そうだろう」

最高司令官同志は無線変信紙を机の上において、明るい面持ちで戦士たちの姿を思いうかべた…。

最高司令官同志は、戦線視察に出発する準備をととのえると、ただちに部屋を出た。副官と随員たちが整列する林の中では、数台の乗用車がエンジンをかけた。

いつにもまして澄んだ朝だった。向こうの農家では子どもたちの本を読む声が流れ、朝もやの中で栗畑を中耕する農民たちの話し声が、牛の鈴の音とともに聞こえてくる。

「よい朝だが、暑くなりそうだね。戦士たちの背中は汗でぬれ、戦線は火を吐くだろう」

最高司令官同志は、軍服の腰に両手をあてて副官に話した。見送る人びとに手をふり、口もとに微笑をうかべながら乗用車にのった。車は朝もやをついて夜明けの道を走った。

見送る人びとは、戦線に向かって走る乗用車をじっと見つめながら考えるのだった。

――人民の力を一身に集めた最高司令官同志がいるからこそ、朝鮮の力はこれほどにも偉大なのだ――

刻々と迫る勝利の日を心に描き、最高司令官同志の構想にしたがって立ちあがるであろうすべてのものを想像しながら、かれらはいつまでも立ちつくしていた。

乗用車は道路にわだちのあとを残しながら、山すそをまがった。日の光に車窓がきらりと光った。

(おわり)

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