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各地でヘイトへの取り組み

2022年12月14日 15:00 社会を知る~今週のnewsトピック~

 

日本社会や在日同胞を取り巻くニューストピックを週に一度、紹介する。

各地でヘイトへの取り組み

ヘイトスピーチ・ヘイトクライムをなくすための市民レベルの取り組みが、各地で行われている。

全国で初めてヘイトスピーチに罰金を科す人権条例を制定(19年12月16日)した神奈川県川崎市では8日、条例制定3年に際し、市民団体「『ヘイトスピーチを許さない』かわさき市民ネットワーク」が記者会見を開いた。会見で発言した同ネット事務局の三浦知人さんは、条例制定後は路上でのヘイトスピーチが著しく減少した一方、インターネット上でのヘイトスピーチに影響され「ヘイトクライムが市内で起きている」と指摘した。同ネットは市に対して、被害者救済のため、ネットモニタリングの実施、プロバイダーへの積極的かつ迅速な削除要請の推進などを求めた。

一方、沖縄糸満市では、市民団体「沖縄カウンターズ」が9、10日の両日にかけて企画展示「知ってほしい ヘイトスピーチのこと」を開催した。会場の糸満市新川区公民館では、沖縄や外国ルーツの人々に対するヘイトスピーチなど240点をパネルにして壁一面に貼り、被害の深刻さを可視化したほか、市民団体が求めている条例などを紹介。市民団体のメンバーは来場者に対して、今月5日に発表された沖縄県のヘイトスピーチ規制条例の骨子案を配布し、県が実施しているパブリックコメントに応じるよう呼びかけた。

学園放火に判決、「差別犯罪」言及なし

大阪府茨木市のコリア国際学園に侵入し火をつけるなど、計3件の罪で起訴されていた太刀川誠被告(30、無職)の判決が8日、大阪地裁であった。梶川匡志裁判長は「ゆがんだ正義感に基づく独善的な犯行だ」とし、懲役3年、執行猶予5年(求刑懲役3年)を言い渡した。

被告は、▼3月に立憲民主党の辻元清美氏の事務所(大阪府高槻市)に窓を割るなどして侵入した建造物侵入などの罪、▼4月にコリア国際学園の敷地内に侵入し、段ボールに火をつけ床を焼損させた建造物損壊などの罪、▼創価学会施設(大阪市淀川区)で5月、コンクリートブロックを投げて窓ガラスを割った器物損壊などの罪で、7月5日に逮捕・起訴されていた。

裁判の審理過程では、検察側が「(被告が)特定の政治思想、国籍、信仰に対するゆがんだ憎悪心から犯行に及んだ」と論告し、学園に対する犯行が、在日朝鮮人に対する差別犯罪、ヘイトクライムであることが指摘されていた。しかし、今回の判決では犯行が差別意識に基づくものであるという言及が一切なされなかった。学園の金淳次理事長は判決後の記者会見で、「差別犯罪ということが看過され、執行猶予とした結論は不十分だ」と訴えた。

今年8月には、在日朝鮮人集住地の京都・ウトロ地区へ放火した被告に有罪判決(懲役4年)が下されたが、同判決も犯行動機について「特定の出自を持つ人々に対する偏見や嫌悪感」と言及しただけだった。原告側の関係者たちからは、判決は「人種差別」という言葉を意図的に避け、事件を被告個人の感情によるものに矮小化したと非難の声が上がっていた。

ウィシュマさんの映像、一部提出へ

昨年3月、名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)の収容施設で死亡したスリランカ人女性のウィシュマ・サンダマリさんの遺族が国に損害賠償を求めた訴訟の第4回口頭弁論が12日、名古屋地裁で行われた。国側は、ウィシュマさんの生前の様子を記録した監視カメラ映像の一部を「年内に提出する」と明らかにした。

今回提出される映像は、ウィシュマさんが亡くなるまでの2週間の様子を記録した監視カメラ映像295時間分のうち、訴訟開始前の証拠保全手続きで遺族側が閲覧した約5時間分のみ。遺族側は引き続き、全映像の開示・提出を国側に求めていくという。

防衛省が世論工作の研究

日本の防衛省が世論工作の研究に着手していたことが明らかになった。報道によれば、この研究では、人工知能(AI)技術を使い、交流サイト(SNS)にあふれる大量の情報を収集、分析し、ネット上で影響力のある「インフルエンサー」を特定する。そして、インフルエンサーに防衛当局に有利な情報を発信させ、発信内容が流布するよう情報操作を繰り返す。同研究の目的は、防衛政策への支持を広げること、特定国への敵対心を高めること、反戦の機運を抑制することなどにあるという。

このような研究に対しては、世論工作によって情報の真偽の見極めが難しくなるため、思想統制につながる恐れがあるとの懸念の声や、防衛省は説明責任を果たすべきだとの指摘もある。

日本政府は中国やロシアなどの「情報戦」に対処するという名目のもと、今月中に改定する国家安全保障戦略など安保関連3文書に、情報戦の能力向上を盛り込もうとしている。

中国-アラブ諸国の関係強化

中東における米国の存在感が薄れる中、中国とアラブ諸国が関係を強化している。

中国の習近平国家主席は7日から、サウジアラビアを訪問。8日には同国のサルマン国王や首相を務めるムハンマド皇太子と会談を行い、「包括的な戦略パートナーシップ協定」を結んだ。同協定では、中国の経済圏構想「一帯一路」とサウジの経済改革計画「ビジョン2030」の連携を進めることで合意し、約4兆円に上る投資案件に調印した。

サウジアラビアは長年にわたり親米路線を取り続けてきたが、近年は中露との関係性を重視して経済の多角化を目指している。米国が牽制する中露ら新興5カ国によるBRICSへの加盟に関心を示す一方、OPEC+(石油輸出国機構と非加盟産油国)での原油減産をめぐり増産を要求する米国との対立も鮮明になっている。

一方で9日には、習主席とペルシャ湾岸6カ国から成る湾岸協力会議(GCC)の首脳による会談が行われた。中国とアラブ諸国双方は、これまでドル建てで行っていた石油・ガス貿易の取引を人民元決済で推進していく考えを示した。また、中国本土と台湾は「不可分の領土」であるとする「一つの中国」原則を支持し、人権問題を通じた他国への内政干渉を拒否することでも一致した。米国は基軸通貨のドルで国際貿易・金融取引の決済を進めることで世界の金融秩序を支配し、台湾問題や新疆ウイグル自治区の人権問題などを煽りながら中国に圧力をかけてきた。それだけに、中東での存在感を強めようとする中国に神経をとがらせている。

(朝鮮新報)

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