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〈金剛山歌劇団〉主要キャストに聞く、公演にかける思いと見どころ/金理里さん(4)

2022年11月12日 10:53 文化

叶えたい、共演の夢

2020年から始まったコロナ禍のなか、公演を通じて各地の同胞や日本の市民たちを勇気づけ、芸術文化の持つ力を内外に知らしめてきた金剛山歌劇団。ステージを彩る主要キャストたちに、公演にかける思いと見どころを聞いた。(文・韓賢珠、撮影・盧琴順)

巧みな演奏で観客たちを魅了する金理里さん

「七夕の夜空に輝く天の川、優美に舞い降りる鳳凰を映し出す民族楽器チョッテの音色が神秘的な世界へと誘ってくれます」(2022年度巡回公演パンフレットより)

洗練された演奏技法で、民族楽器による表現の多様性を魅せ、深い余韻を残した。初となる本公演のソロステージ、堂々の演奏をみせたのは入団5年目の金理里さん(27)だ。

「責任の重さを感じるとともにすごく光栄だった。チョッテという朝鮮民族楽器を知らしめる大事な機会だとも考えた」。ソロを抜擢された当時の心境をそう語った金さん。民族楽器のなかでも管楽器・チョッテで「何かインパクトを残さなくてはと思っていた」矢先、独奏の話が持ち上がった。

金さんによると、今回披露する作品「天の川と鳳凰」は、本来、小編成の楽曲で、「天の川」と「鳳凰」という二つの作品が一つに合わさったもの。過去に歌劇団で編曲したのを機に作品化され、「両方の曲の良い部分がつまった楽曲となった」。

また巡回公演にあたっては、新たな工夫も。「聴く人たちの幅広い関心を集めるためには、従来の民族的な要素だけでなく現代的な美観が必要」との思いから、チョッテの伴奏として、カヤグムとチャンゴ、ピアノが加わり、とりわけピアノとカヤグムの演奏は「担当する団員たちが自らアレンジを手がけた」という。自身が高級部の頃にあこがれていた曲を、歌劇団の一員として披露できることのうれしさもまた、完成度をあげるうえで、かのじょを後押しした。

チョッテの魅力について「やわらかで物悲しい音色に、緩くも芯のある楽器。演奏する際、朝鮮民族特有の恨(ハン)が必要な場面では、その特徴を存分に出せる楽器」だと語る金さん。地元・京都で2年間の教員生活を経て、2018年に金剛山歌劇団へ入団。原動力ともいえるこの背景がいま、演奏家になったかのじょを、さらに奮い立たせている。

「高3の時に出会った『祖国を歌う(조국을 노래하네)』という曲がきっかけで、自分の進路が明確になった。祖国や組織の大切さを知り、先代たちが守ってきたものを守っていかなくてはと思った。そしてチョッテを演奏する過程で、自分の中にいろんな感情があることも知った。今回、奏でる曲は、祖国のチャンダンがしっかり込められた曲。いま自由に行けない状況にあるからこそ、祖国を近く感じられる曲を披露するとなると、一層身が引き締まる思いだ」(金さん)

歌劇団へ入団後、2年間は日々の練習に加え、朝鮮での演習に参加しながら技術向上に努めたが、その後コロナが拡大。金剛山歌劇団の演奏家として、本場の息吹を感じることのできない今は、大きな痛手であり、もどかしくもある。けれども揺るぎないのは、かつての自分がそうだったように、「チョッテの音色や曲の旋律から、祖国と同胞社会の大切さを届けたい」という思いだ。

「かつての教え子たちと同じ舞台に立ちたいという夢がある。その夢の日に、より素晴らしい演奏ができるよう、これからも頑張りたい」。

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