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〈取材ノート〉「慣れ」ないように

2021年05月14日 10:38 コラム

養護教諭として京都初級の教員になった曺元実さんを取材した。

愛知朝高卒業後、看護師になるために医療系の大学に進学し、その後地域の病院で務めていた曺さん。そのため当初は「安定した職場を離れてまでなぜ」という周囲からの声も聞いたそうだ。その点本人に聞いてみると彼女はこう答えた。

「民族教育を発展させることを考えたとき、外から評価するのではなく、直に携わる重要性を強く感じました」

そして続けた。「自分も経験してきたはずなのに、子どもたちがこんなに生きづらい社会だったということを、大人になるまでわからなかった」。

学生時代、通学時はチマ・チョゴリで通ったという曺さん。「差別用語を言われても、いい意味での試練だと捉えていた」と当時を振り返る彼女の姿から、それを強いる社会が、昔も今も存在する事実に身震いした。そしてこの言葉以上に強く印象に残ったのは、彼女が眼差す子どもたちへの思いだった。

「例えば子どもたちがヘイトスピーチを浴びせられる経験をしたとき、外からの攻撃に蓋をしている部分をしっかり受け止めて対処してあげたい。そうでないと痛みに気づかず大人になり、それが卒業後、朝鮮人として生きるのを諦めてしまうことに繋がるから。大人になってからも自分は朝鮮人だと堂々と言えるように、支える立場でありたい」(曺さん)

学校保健に関する専門性を兼ね備えた曺さんだからこそ発することのできる言葉だと思った。

子どもたちが被差別体験に「慣れ」ないように、筆者もまた寄り添うメディアでありたい。(賢)

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