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〈取材ノート〉ウトロを訪ねて

取材ノート再開発の進むウトロ地区を取材した。市営住宅第一期棟への引っ越し前夜。予定していた取材を終え、とある同胞宅を訪ねた。

時計はとうに20時を回り、急な訪問に申し訳なさを感じつつ取材の意図を伝えると、出迎えてくれたオモニは開口一番――「うん。ご飯食べ」。

食卓の上には、千枚漬にキムチ、カレーに豚汁、鰊の甘辛煮がずらりと並んだ。

「オモニのご飯美味しいで」と筆者に耳打ちしたのは、同宅に滞在していた映画「60万回のトライ」の監督、朴思柔さん。05年にウトロの強制退去問題を取材。その後、がんによる闘病を余儀なくされた監督を支えたのは、ウトロの同胞たちだったという。

「私にとって命の恩人。同じ同胞として、決して負けない、奪われないと最後までウトロを守り抜いたアボジ、オモニたちが誇らしい」

植民地支配の下、「国策」に動員された同胞たちが、差別と不条理の中、共に築き上げたウトロというコミュニティ。行く先々で出会った、温かい人間味あふれる同胞たちの姿は、同時に、長年虐げられ闘い続けた痛みの歴史を想像させた。

昨年は、南のセウォル号事件当時の生存学生がウトロを訪ね、同胞たちは総出で彼らを出迎えた。異国の同胞と、共に歌い踊るひと時に、学生たちは心を癒し、帰路についたという。

排他的な社会の中、自身が受けた痛みを、限りない他者への共感へとつなぐ同胞たちの姿は尊く、胸がいっぱいになった。

(宥)