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〈包囲〉された在日朝鮮人への想像力―現代日本にくり返される歴史的トラウマと文学/李英哲

2017年11月06日 14:18 主要ニュース

2017統一人文学世界フォーラム報告(要旨)

「関東大虐殺」と現代日本―歴史的トラウマの反復と「包囲」

「きみたちは完全に包囲されている!」―2009年12月、在特会が京都朝鮮第1初級学校(当時)を白昼襲撃し放ったセリフである。彼らの発した「不逞鮮人」という古い言葉とともに、「包囲」という言葉が喚起するイメージにあらためて強烈な怒りと恐怖を覚えたことから、報告者は今日在日朝鮮人が被る暴力と歴史的トラウマについて主題にすえつつ、ところが一方で、在日朝鮮人の文学、なかでも日本の文学界、出版メディアに流通する在日朝鮮人日本語文学が、「北朝鮮制裁政治」下で朝鮮学校が暴力のターゲットとされている現実について、内在的に掘り下げて作品化したり、異議申し立てするどころか、ほとんど黙殺あるいは矮小化しているという落差、文学的想像力の減退について考察した。

報告ではまず、1990年代後半から2010年代の今日における日本の政治社会状況が、1923年の「関東大震災時朝鮮人大虐殺」時のそれと様々な点で酷似しているという状況認識と、大虐殺に際しあらわれた朝鮮人のトラウマ的心理と行動が、1945年の「8.15解放」をはさみその後もさまざまに変容しながらずっと反復され続けたこと、またそれらは常に日本社会によって「包囲」され続けてきたという視点を提示した。困難に満ちた脱植民地化のプロセスを切り開き生き続けてきた在日朝鮮人の民族教育運動、朝鮮学校という「解放空間」が、現代日本における上からの「制裁」政治と下からの草の根の暴力に挟撃されながら、再び深刻な被害とトラウマを被っている。在日朝鮮人は「日本という巨大な密室におけるドメスィック・バイオレンス」(郭基煥)、つまり現代日本に「包囲」されながら上下からのヘイト・クライムにさらされていると言えよう。

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