短編小説「労働一家」2/李北鳴
2022年09月30日 10:06
金鎮求は踊りながら、しきりと李達浩を探した。最近いつもより顔色が悪い彼に、気分転換をさせる意味でも踊りの中に引きこもうとしたが、いつの間にか見失ってしまった。 歌に合わせた踊りが終わった時、三洙は同僚…
短編小説「労働一家」1/李北鳴
2022年09月30日 10:06
建国室(解放直後、共和国北半部の各職場に設けられた民主宣伝室の一種)は労働者たちの雑談と笑いでざわめいていた。 ちょうど昼食を済ました旋盤工たちは、新聞紙で太く巻いたタバコをうまそうに吸いながら次の出…
短編小説「海州―下聖からの手紙」33/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年09月04日 09:00
兄さん、これが手紙の全部です。 数日後、私たちは自分たちの手で敷いた線路を走って平壌に行きます。金策工業大学通信学部入学の推薦を受けたんです。私たちは運輸工学部だそうです。 それから休暇を家で過ごし、…
短編小説「海州―下聖からの手紙」32/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年09月02日 09:00
私も「忍び作業」に出て桶を背負い、掲示板にも出たりしましたが、それは小学校のとき100メートル走をしていたあの競争心のわくを抜け切れてなかったんです! この頃、私はようやく祖国について、真の生活、真の…
短編小説「海州―下聖からの手紙」31/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年08月31日 09:00
『坊や、俺たちの分まで生きるんだ。ただこれだけは忘れないでくれ。愛する祖国の未来を思い、俺たちがどんなに美しい心を持ち、どれだけ多くの夢と設計図を持っていたかを……。そしてどうかおまえと多くの後輩たち…
短編小説「海州―下聖からの手紙」30/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年08月29日 09:00
かれの声は急に沈み、沈痛なおももちになりました。 「一日中、僕らは5回に及ぶ敵の反撃を退けたが大隊の攻撃信号は上がらなかった。ところが小隊にはわずか6人しか残っていなかったんだ。 みんな最後の決戦を覚…
短編小説「海州―下聖からの手紙」29/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年08月27日 09:00
『詩人』と呼ばれたトンムもいたな。かれは降仙製鋼所の民青同溶解工出身だった。かれの傑作は、巨大な自動化された電気炉を主題とした詩なんだが、実に炎のごとく熱烈に、そして浪漫的に皆に読んで聞かせるんだ。小…
短編小説「海州―下聖からの手紙」28/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年08月25日 09:00
チルソントンムは、無言のままただじっと坐って聞いていました。話がすんでもかれは動こうとはせず、山の下に光を放つあちこちの現場や遠くの野原と山脈を、さま感慨深げにながめるのでした。そして、私たちがいる梅…
短編小説「海州―下聖からの手紙」27/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年08月23日 09:00
「ここにあるわ……」。私はノートを差し出しました。 「見てくれたの? どう、うまくいきそうかい?……」 つづけざまにこう質問するからは、一見、私の評価次第に自分が心血を注いだ考案品の運命がかかっている…
短編小説「海州―下聖からの手紙」26/キム・ビョンフン作、カン・ホイル訳
2022年08月21日 09:00
(どうしたというのかしら?……。願書を出したので気がねして、宿舎に帰れなかったのかしら?) こう思いながらふと私は、かれの枕もとにある本に目をとめました。なんの気なしに一冊を手に取るとそれは大学ノート…