〈青商会、挑戦と継承の足跡〉Ep.6 試練の中で試された真価(1)/莫大な損失と不信感
2021年03月10日 16:00 主要ニュース平壌学生少年芸術団(ピョンコマ)公演を控え、各地の開催地では万全の準備が整っていた。しかし「拉致問題」を世論化し朝鮮敵視の姿勢を強めた日本政府は、公演出演者以外の随行員の入国を問題視し、直前になって随行員の入国を拒否。これを受けて朝鮮側は日本での公演を断念し、15年ぶりに日本で行われるはずだったピョンコマ公演は中止となった。
すでにピョンコマのメンバーとともに、北京で成田空港行きのフライトを待っていた中央青商会の玄大植総務部長(現・商工連合会副理事長)はその知らせを聞いた瞬間、真っ先にこう考えた。「青商会が崩壊する」ー。ピョンコマの公演開催をめぐっては準備段階から中央及び地方の青商会で賛否両論があり、情勢が悪化する中で公演中止を強く求める意見も出ていた。そのような過程を乗り越えて公演開催へと踏み切ったのだが、結果的に最悪のシナリオを迎えてしまった。これから起こりうる事態を考えると、玄大植総務部長は悲観的にならざるを得なかった。
その頃、ピョンコマを出迎えるため成田空港に向かっていた中央実行委員会のメンバーたちは、青天の霹靂のような知らせを耳にし、愕然としていた。悔しさや怒りなど、さまざまな感情を抱いていた中央実行委員たち。緊急で招集された実行委員会会議で事のいきさつを聞いたが、事情を飲み込もうとしても込み上げてくる感情が邪魔をし、現実を簡単には受け入れることができなかった。
公演開催のために尽力してきた地方の青商会役員らも同じような思いを抱いていた。むしろ、状況はより深刻であった。各地の青商会からは怒りや不満の声が噴出。中央青商会役員の解任を求める声まであがった。夢にまで見た大舞台が目の前で霧散し、残ったのは莫大な損失と会員たちの不信感。実行委員長を務めた黄元圭さん(59、元・愛知県青商会会長)が認めるように、青商会は「崩壊の危機」に立たされていた。