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1世を支え続けたゆとりの空間 /滋賀「ホスの会」20周年

2023年12月04日 08:00 在日同胞

滋賀県内に居住する高齢の在日朝鮮人たちの集い「ホス(湖)の会」は今年で20周年を迎えた。それに際し11月26日、大津市内にある膳所ふれあいセンターで、20周年を祝賀する記念会が開かれた。参加者らは同会の歩みを振り返り、朝鮮料理や京都朝鮮歌舞団による公演などを思う存分楽しんだ。

参加者たちは京都朝鮮歌舞団の公演を楽しんだ

すべての同胞を募って

11月26日、「ホス(湖)の会」20周年記念の集いが開かれた

20年間に渡り、滋賀県内に住む在日同胞1世らの憩いの場として運営されてきた「ホスの会」。同会を立ち上げたのは、当時、在日朝鮮人高齢者、障がい者に対する年金の無給付や戦後補償問題などの解決を求め、声を上げていた滋賀県内のボランティア団体だった。

1959年に制定された国民年金法における国籍条項は、在日朝鮮人たちに対する年金の支給を許さなかった。82年には、難民条約の批准に付随し国籍条項が撤廃されるも、大半の自治体が経過措置を正しくとらなかったために、無年金状態となった1世同胞たちも少なくなかった。

在日2、3世と有志の日本市民たちで構成されるボランティア団体は、国民年金法制定以降、国籍条項の撤廃を県内の行政機関に働きかけ続けた。その他にも、先の戦争の影響で渡日を余儀なくされ、無年金、低所得、非識字などを理由に、異国の地で苦しい生活状況にあった1世の同胞たちへの支援活動を展開していった。

そして、同団体は1世たちがルーツを共有する同胞たちと民族の文化や芸術を楽しむ憩いの場を県内に作る目的で、2003年に「1日お楽しみ会」(ホスの会の前身)を発足した。

毎月の最終日曜日に開催される同会の集いは、1世同胞たちが幅広く交流を深められるよう、食事や体操、旅行など様々な企画を行ってきた。総聯、民団、無所属を問わず、県内に住むすべての在日朝鮮人1世たちを募った同会は、高齢化に伴い1世同胞の数が減少した現在も、2、3世の同胞たちが集まり、共に歌い踊る場となっている。

平和実現の灯に

会場には20年間の活動を振り返る写真と映像が展示された

女性同盟とホスの会はこれまで、交流会やお花見、朝鮮料理作りなどの企画を開催するために連携を図ってきた。

在日1世たちの居場所をつくる活動に今日まで携わってきた鄭淳子顧問は「20年間、1世同胞たちは毎月の集いを待ちわび、心の支えにしてきた。一つの民族として共に同胞たちが交流を深められるここは、とても意義深い場だ」と振り返った。

20年に渡り同会の責任者を務めてきた川崎松男さん(79)は、在日朝鮮人たちと接する過程でかれらが抱える困難に共感し、「行き場の無い在日高齢者のための場」を作りたいと思ったという。川崎さんは、ボランティア団体と共同で会を設立。介護資格を取得し、温泉旅行や近隣大学との交流会、1世同胞たちの家庭を定期訪問するなど、会の活動に尽力してきた。川崎さんは「会の活動を通じ、在日朝鮮人たちに元気を与えたい。この交流が日本と朝鮮半島の平和実現の灯になることを祈る」と語った。

会の発足以前から、無年金問題など在日朝鮮人を取り巻く差別に対する抗議を続けてきた清水義昭さん(81)は、「人間として差別を許したらいかん」と力を込める。会の運営に長年携わってきた清水さんは、活動を次世代へ引き継ぐ必要性を強調しながら「自分の中に存在する差別意識を自覚することが大切だ。多くの若い人がこの場を共にし、当事者たちの話を直接聞いてくれたら」と語った。

(朴忠信)

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