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ニョメン・オーガナイジング①共感で密に繋がる女性たち/ 文・イラスト 張歩里

2024年05月09日 06:19 論説・コラム

「ニョメン」デビュー

「私ってニョメン(女性同盟)なの?」「いやいやニョメンはちょっと…」という30代の同世代女性の言葉をよく聞く。

私もつい最近まで本職以外のことはなるべく避けようとしてきたし、予定通りにいかない子育てに追いやられ、これ以上は面倒なことを増やしたくないというのが本音であった。それに、女性同盟活動をすることでなぜかネガティブなレッテルを貼られると思い込んでいた(何がどうネガティブであったのか? それはおいおいこの連載で、その本質的問題点について読者の皆さんと考えてみたい)。

そもそも政治や運動は「おじさん」がするものと呪いをかけられて育ったわれわれ女性にとって、社会運動に積極的に参加する自分の姿は想像しがたいものかもしれない。でも結論から言うと、「ニョメン」デビューすることで私の生活は豊かに広がったし、何よりも自身の「アップデート」が楽しい。

まだまだそんな大したことはしていないが、暮らしの中で心躍る言葉に出会ったり、些細なことにニヤッと笑いあい「そうそう!」とテーブルを軽く叩く共感が増えた。運動とは従来の「日常」の変化であり、身の回りの目の届く範囲の小さいことの変革からはじまるものだ。

活動の起点は何か

そもそも私のニョメンイメージの原点はオモニである。いくつものパートを掛け持ちしながら家計を支えていたオモニは、田舎でイルクンをしていたアボジに「自分だけ社会を知っているみたいな顔して…」とよく愚痴っていた。だから私も在日朝鮮人運動は男のものと勘違いしていた。

しかし今考えれば、在日2世のオモニも女性同盟でれっきとした社会運動をしていたはずである。しかしながら今、私の脳裏に浮かぶ過疎地のニョメン活動は、オモニの背中越しにみていた「タノモシ」である。恥ずかしながら30代まで「タノモシ」は〈다노모시〉というウリマルだと思っていた。「頼母子」は同胞の日常に密着した庶民金融といえるもので、同胞同士の強い結びつきがないと成り立たず、ひと昔前までは同胞生活に意外に大きな力を発揮し経済生活ばかりでなく精神生活をも支える重要な役割を果たした(と聞いている)。当時30代であったオモニの年齢に自分が実際なって思うことは、生まれ故郷や出身地でない所で30代から70代までの幅広い世代の同胞女性らが集まり、「信頼できる場(マダン)」を構築していたこと自体がなんて尊いものであろうかということ。社会的問題は往々にして社会的にパワーのない人のところに起こるものだ。困窮する経済生活の救いを共に求め、互いの苦難に共感することで密に繋がりあった同胞女性たち。在日朝鮮人女性という「当事者」性と、その「もろさ」ゆえに共鳴しあうコミュニティー力こそ、ニョメン活動の起点ではないかとも思う。

英知と感性の融合

現在30代の在日朝鮮人女性の暮らしや生活様式はさまざまだ。みんなあたり前のように結婚して子育てしているわけではない。親の介護をしている女性もいれば、地方から出てきて単身で働く女性もいるし、結婚という選択をあえて取らない人だっている。また核家族化が進む中、両親や夫といった家族や、隣近所のような地域の協力を十分に得られないまま、妊娠、出産、育児をしている同胞女性も多い。

私は常日頃から、さまざまな暮らしを抱える中でもすべての女性同胞たちが、ウリ運動にコミットできなければならないと思っている。だってこの日本社会で「朝鮮人」として生きることは相当な覚悟と試練が付きまとうから。

「いやいやニョメンはちょっと…」と言っていた時から月日が流れ、40代目前の私は「ニョメン」の持つパワーを実感している。それは「先輩! ついていきます‼」と尊敬するお姉さま方に出会えたし、心が大きく解きほぐされる「ニョメ友」たちの存在に日々励まされているからである。今や「ニョメン」デビューの理由はさまざまでいいのだ! 過酷で厳しい社会現状に孤独にならず、その存在自体を認めてくれるマダンは誰にでも必要だ。

「揺り籠」から「墓場」まで、それがニョメン! というのが最近私が持っているニョメンのイメージだ。実際、私の娘たちは生後3カ月で参加したニョメンボーリング大会の写真で「朝鮮新報デビュー」した。娘たちが30代になった頃、私はニョメン顧問になって一緒に活動しているかもしれない。

幅広い世代が、さまざまな経験、苦難を分かち合う。何よりも75年以上続くウリ運動の英知と、同胞女性の感性が融合したニョメンだからこそ、その学びは大きい。この連載で今までに気づけなかったり、忘れていたウリ運動の魅力を読者と一緒に考えていきたい。

(関東地方女性同盟員)

※オーガナイジングとは、仲間を集め、物語を語り、多くの人々が共に行動することで社会に変化を起こすこと。新時代の女性同盟の活動内容と方式を読者と共に模索します。

(朝鮮新報)

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