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〈関東大震災朝鮮人虐殺100年〉総聯東京都本部、主催する追悼会へ都知事の追悼文求める

2023年08月10日 12:13 主要ニュース 歴史

“事実を認め、現代の差別止める意思表示を”

100年前の関東大震災時に虐殺された朝鮮人の追悼会を主催する総聯東京都本部は9日、東京都に対し、要請を行った。関係者らは、この日の要請で、毎年9月1日に東京都墨田区の都立横網町公園で行っている「東京同胞追悼会」に、小池百合子都知事名義の追悼文を送付することなどを求めた。

要請は、東京都の庁舎で行われ、追悼会の主催団体である総聯東京都本部の高徳羽委員長と東京朝鮮人強制連行真相調査団の西澤清代表、後援団体のフォーラム平和・人権・環境(平和フォーラム100年委員会)、総聯本部の傘下団体からそれぞれ関係者たちが参加した。

要請では、小池百合子都知事あての要請文を、高徳羽委員長が読み上げ、都の担当者に手渡した。

総聯本部と真相調査団が提出した要請文では、日本政府は100年が経過したいまでも関東大震災時の朝鮮人虐殺を隠蔽し、歴史的事実を調査・究明することなく、当時の加害を風化させようとしていると指摘。2016年のヘイトスピーチ解消法の施行後、18年10月に関連条例を制定するなど、人権尊重の社会にむけた施策を講じる都が、「都民を庇護できなかった100年前の歴史を踏まえ、歴史的事実を明らかにし真相究明に真摯に取り組む」ことを求めた。そのうえで、「100年前の悲劇を繰り返さない都知事および都の意気込み、平和への決意」として、同追悼会あてに、「追悼の辞を寄せてほしい」と求めた。

また要請では、東京都が日本政府に対し、平和で人権尊重の理念が実現される社会の構築のために、▼関東大震災朝鮮人虐殺の謝罪と真相究明、▼犠牲者遺族への賠償を、誠意ある形で行うように要望することを強く求めた。

この日の要請では、東京都商工会、朝青東京都本部、女性同盟東京都本部、東京都青商会、教職同東京都委員会、留学同東京地方本部の6つの総聯本部傘下団体による要請文も提出された。要請で関係者らは、「不当な差別や偏見のない成熟した共生社会の実現を目指しているはずの現在でも、在日朝鮮人の人権は当たり前のように否定され、不当な差別にも直面している」として、100年前の朝鮮人虐殺に対し、真摯に向き合うことこそが、現存する差別をなくすことにつながるとした。要請文は、同胞追悼会に小池百合子都知事が出席し、追悼の辞を述べるよう求めた。

応対した東京都建設局公園緑地部の中尾嘉克管理課長は「要請があった事実、またその内容について知事と関係部署に速やかに伝える」と述べた。

女性同盟東京都本部の趙英淑委員長は「約20年前には、関東大震災を直接体験した在日朝鮮人の家族がご存命で、当時の話を聞く機会が少なくなかった。しかし今、当時の記憶を実体験として語る方が居なくなる中、歴史否定が横行する日本の状況を危惧している」と発言。また東京朝鮮人強制連行真相調査団の金哲秀さんは、「9月1日を迎えるたびに『100年前の虐殺が二度と繰り返されてはならない』という発言をよく耳にするが、私たちはいま起こっている在日朝鮮人に対するヘイトなど、100年前と同じ現状が続いているという認識のもとで、二度と繰り返されてはならないではなく、これを早く断ち切らなくてはいけない」と述べ、「都の首長、日本政府の責任者が100年前の事実を認め、いまある暴力を止めると意思表示をすることが、暴力の連鎖を断ち切るうえで大事だ」と強調した。

午後には会見も

同日午後、都内で会見が開かれた。

会見に臨んだ総聯東京都本部の高徳羽委員長は、「追悼会は100年前に犠牲となった在日朝鮮人の子孫たちによる会合だ。その重みを受け止めてほしい」と発言。1999年、関東大震災時の朝鮮人虐殺を目撃した文戊仙さんの人権救済申し立てを受け、2003年に日弁連が日本政府へ勧告したことについて触れながら、「朝鮮人に対する差別や迫害は形を変えて残っている」として、差別状況を野放しにする日本政府を強く非難した。また高委員長は「国と軍隊、警察、自警団など日本の民衆が起こした虐殺から100年の節目を迎え、未来志向を持って対応してほしい。そして在日外国人たちが住みづらい社会状況をなくすために都が率先して対応するべき」だと訴えた。

続いて発言した東京朝鮮人強制連行真相調査団の西澤清代表は「私の祖母とおじが関東大震災時に亡くなり、当時12歳だった父親も身体にやけどを負い、一生障害者として過ごした。家族から嫌というほど話を聞いた自分が確信をもって言えるのは、関東大震災時の朝鮮人虐殺は、日本人が加害者の事件だったということ」と言及。真相究明および過ちを認め謝罪する立場をとることで、きちんとした総括をしてほしいと語った。同氏は会見後、「虐殺された朝鮮人の子孫たちが、こうして要請する意味を日本人である私たちが考える必要がある。73年に横網町公園に碑を建てた原点に立ち戻り、真相究明と友好親善を進めていこう」と語った。

毎年9月1日、東京都墨田区の横網町公園では、同胞追悼会に先立ち、日朝協会東京都連合会などが主催する関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典が行われている。小池都知事は、歴代の都知事が、その式典に向けて送ってきた追悼文の送付を、式典の同日同時刻に排外主義団体らが集会を始めた2017年から取りやめている。

関東大震災から100年となる今年も、例年同様に、午前に同追悼式典が、午後から今回要請を行った総聯東京都本部主催の同胞追悼会が執り行われる予定だ。

(韓賢珠)

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