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孤独な作業の意味は

2023年07月27日 09:00 取材ノート

今年6月19日、フォトジャーナリスト・安田菜津紀さんへの差別投稿を巡る裁判判決があった。在日朝鮮人2世の父を持つかのじょが司法闘争へと踏み切ったのは2021年12月のこと。投稿者たちは、朝鮮半島にルーツを持つ人々を侮辱する「チョン」という差別語に加え、「密入国」「犯罪」などと事実とは異なる「パワーワード」を並べながら、かのじょと父親の存在そのものを否定した。

裁判では投稿者に対し33万円の賠償命令があった。弁護団によれば、侮辱罪の損害賠償額としては比較的に高く、裁判所が問題を一定程度重く受け止めたことの表れだという。差別禁止法のない日本で、「(被害者の)差別されない権利を認める余地がある」とした今回の司法判断は、被害当事者たちの「行動の積み重ね」がもたらしたものだった。

一方で、その結果を得るまでにかれらが支払った代償やリスクはどうか?潜在的な差別意識や日本社会に生きるマイノリティーをとりまく状況は、「差別ではない区別」などといった他者を想像できない「都合のいい」言葉たちが散見される程だ。以前会見の場で提訴した理由を語った安田さん。

「声を上げることやネットの書き込みと向き合うのは、時に非常に孤独な作業だ。けれど当事者たちを孤立させたくない」。

問題の芽を確認した時、あなたはどう行動するか。ヘイトスピーチやヘイトクライムと関連する取材を振り返りながら、当事者が声をあげることのリスクそして意味を、改めて考えている。

(賢)

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