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〈本の紹介〉朝鮮戦争無差別爆撃の出撃基地・日本/林博史

2023年06月26日 09:00 歴史

米軍の狂気と日本の加害を暴露

高文研。2750円(税込)。03-3295-3415。

祖国解放戦争勝利70年。それを記念した関連企画が本紙や月刊『イオ』7月号で展開されている。その中に、戦時文学を扱った企画がある。祖国解放戦争をテーマにした朝鮮の文学作品に、「米帝の爆撃」はストーリーの中で大小の事件として数多く登場する。それは過去の作品にとどまらない。最近朝鮮で放映された連続テレビドラマ「ある検察官の手記(한 검찰일군의 수기)」でも「米帝の爆撃」は描かれている。このことは「米帝の爆撃」なしに祖国解放戦争を語れないということを物語っている。米国による爆撃により朝鮮のすべての都市や村などは灰燼に帰した。

そして、爆撃を行ったB―29などの爆撃機は東京の横田基地と沖縄の嘉手納基地から飛び立った。

本書はその事実に着目し、日本の加害責任を日本社会の共通認識とすることで、「朝鮮半島の平和実現のためへの日本の貢献について考える素材」とすることを目的として書かれた。

本書の主題は二つ。一つは米軍の非人道的な無差別爆撃の詳細、二つ目は、加害に加担した日本の実態だ。本書はそれを米空軍史料に基づいて批判している。

また、日本が植民地支配を反省しないばかりか、朝鮮戦争のみならずベトナム戦争でも沖縄からB―52が飛び立つなど、米軍の直接出撃基地となったことなど加害の歴史を繰り返してきたと指摘。

「侵略戦争や植民地支配を正当化しようとする流れが日本の主流になってしまっている現状を深刻に反省し克服しなければならない」という著者の主張に日本社会は向き合わねばならないだろう。

資料では米軍が朝鮮のダムを破壊し、洪水を引き起こしたことなどのデータだけではなく、ライフラインを破壊しても朝鮮の工兵や労働者によってすぐさま直されてしまう米軍の苦悩、朝鮮人民の奮闘も知ることができる。

公文書の山から資料を探し出して丹念に整理した著者の苦労は計り知れない。一方で、一読者として本書の歴史観をすべて支持するわけではないこと、「北朝鮮」という言葉を無批判的に使用している問題点も指摘しておきたい。

(高晟州)

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